それは、自殺五分前からのパワープレー(リンダブックス)
裏カジノを標的にした大胆な計画。
海外ドラマのような勢いとインパクトのある作品です。
集団自殺の為に集まった五人の前に、一人の女性が現れ、人生を逆転させる計画に協力しろと持ちかける。
どうせ死ぬつもりなら、死ぬ前に大胆なことをやってみよう。
死ぬ気でやればなんでも出来る。
そんな危険な挑戦に挑む彼らはどう見ても裏カジノに相応しい外見ではない。
資金を作り装いを整え、カジノへ潜入……。
犯罪ドラマみたいなドキドキする展開が続くわけなのですが、これ、舞台が日本ですよ? 裏カジノ? 六本木の錬金術?
なにこれめっちゃわくわくする!
計画に協力してくれるキャバ嬢なんかも個性が光っていたりして、架空の犬種でうっかり他の動物の名前を口にしてしまう子がいたりするのがなんとも面白いです。実際にこんな子いるよねという説得力があります。
物語全体で一人のキーパーソンがいるのですが、その人との関わり方もそれぞれの背景に絡んでいてとても興味深いなと思いました。
冒頭の事件でなんとも言えない教師が出てくるのですが、凄くよくいるタイプの教師でこういう事件はよくあるのだろうななどと考えてしまうのですが、そこで生み出された「SOSけん」がラストまで絡んでくるのがとても印象的でした。
そして、この冒頭の事件そのものがここまで重要な立ち位置だったとは……という、単なる冒頭ではない構造に驚かされました。
この作品、ジャンルをなんと表現するか非常に悩む作品で、構造展開的には「青春」という感覚なのですが、所謂青春小説と呼ぶには登場人物の平均年齢が高すぎるのですよ。
ヒロイン枠が子持ち女性ですし。
ただ、行動動機がその年齢の人間として非常に説得力がある、キャラクターに説得力があるという意味ではキャラクター小説、キャラ文芸、だとかそう言ったカテゴリに入るのかな? と思います。
帯に書かれている文句によると「スピーディー&ハートフルサスペンス」という表現なのですが、サスペンス、と言われるとやや微妙な気がします。
全体的なスピード感、疾走感とでもいうのでしょうか。とにかく展開のテンポがよく、のんびりは読ませてくれない、イッキ読みしたくなる作品であることは間違いありません。
実際にカジノへは行ったことがありませんが、ラスベガスなんかが舞台の海外ドラマなどを想像しながら、どきどき感を楽しみました。
最後に。
裏カジノのカモフラージュ方法が非常に興味深かったです。妙に説得力がありました。本当に説得力は重要だなと感じました。