ROSEの読書感想文

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占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)

 タイトルは有名なのに読んだことのなかった新本格と呼ばれる推理小説の一作ですが、ミステリ必読書リストの中に入れられることが多い作品です。

 これだけ有名だと非常に期待値が高いものになってしまうのですが、冒頭部分が一種の苦行でした。

 狂人の手記というような序章を長々と……そう、この序章がとても長いのです。

 占星術錬金術に基づいた(と本人が思い込んでいる)話が長々と綴られて、犯人の下準備シーンのような感覚ではあるのですが、文体も硬い印象なので余計に長く感じられてしまいます。

 そして本編! と思いきや、大昔に起きた事件を友人同士で話し合って考察するシーンが長々と続いていく……。

 友人同士の会話は現在のキャラクター小説のような魅力も感じられますが、とにかく状況説明がものすごく長いのです。

 正直な感想を言えば、この段階で有名作でなければ途中で読むことを諦めていそうです。

 もっと言うと、これほど知名度がなければ序章段階で読むことを諦めていそうな作品なのです。

 

 が、有名すぎるあのトリックがどうやって使われているかが気になる。

 逆にネタバレを知っているからこそ最後まで読まなくてはいけない様な気がする。というった作品だと思っています。

 

 殆ど手記と会話文、手紙などで構成されている作品なので地の文が圧倒的に少ない。というより、台詞中の情報量が非常に多いです。

 図解が必要な部分も多いからか図も多い。

 トリック自体は知っていたのであまり驚きはなかったのですが、作者さんが「読者への挑戦」なる挑戦状メッセージを挟んでくるという形式に非常に驚きました。

 挑戦状が叩きつけられる小説なんて初めて読んだ気がします。

 

 犯人めっちゃ大変! と言いたくなる作品ではありましたが、一番印象的だったシーンは、御手洗がホームズをけちょんけちょんに貶すところです。あれだけ貶して人間性は好きと言ってしまうのも凄いのですが、あれだけ貶せるということは読み込んでいるということですね。彼の捻くれた性格を表現する面白いシーンだと思いました。

 

 もう一つ好きなのは、御手洗が名乗りたがらない理由を説明するところです。

 どうしてこの名前になったのかという由来も気にはなりますが、一度聞いたら忘れられない程インパクトがある名前ですね。せめて漢字が違えば……と考えてしまいます。

 

 作中でも過去(四十年前)の事件ですが、この作中時代も現在からするとかなりの過去になってしまうので、公衆電話で会話するシーンや見知らぬ人が訪ねてきても相手をしてくれる一般人など現在からすると少し不思議に感じられるシーンも多いように感じました。

 昭和は凄く長い上に、もう随分と昔なんだなと感じさせられた作品でした。