人形館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
館シリーズ第四作。
これだけ読めば作者さんのパターンなんてわかるだろう。
ド派手な死体が出てくるに違いない。
そんな気合いを入れて読み進めて居ましたが、あれ? あれれ???
150ページ以上読んでも死体が出てこないぞ???
タイトルに「殺人」って付くのに死体が出てこない。事件はいつ起きるんだ!(そのうち起きました)
この作品の主人公が相続した屋敷にはパーツの足りないマネキンが各所に置かれています。
え? これって「占星術殺人事件」だっけ? と思ってしまいましたし、あの事件を作中で語るシーンもありました。
わりと最近占星術殺人事件を読んだばかりだったので思わずニマニマしてしまいました。
シリーズ主人公の島田潔の由来が占星術殺人事件の御手洗潔から来ているだとか、作者さんのリスペクトを感じる部分が多々見られ、後書きにもそのリスペクトが綴られているのが非常に心地よく思えました。
さて、今作ですが、舞台となる屋敷は「人形館」ではなく、「緑影荘」となっているアパートと、飛龍家の屋敷です。「緑影荘」は後から増築されたとのことですが、ここを「人形館」と呼ぶのは住人のひとりでした。確かにパーツの足りない人形があちこちに置かれているので「人形館」という呼び方も納得できてしまいそうですが、人形と言うよりはマネキンなのでマネキン屋敷とかの方がそれっぽく感じてしまいます。
今作は、子供の連続殺人事件、主人公への脅迫から徐々に主人公の周囲での殺人が迫ってくるスタイルです。
今作で注目の人物は主人公の又従弟、辻井です。初登場時からあまりいい印象は持たなかったのですが、想像以上のクズっぷりを披露してくれて彼のラスト含めて凄く好きになった人物です。
推理小説はあまり書きすぎるとネタバレばかりになってしまいそうで感想を書くのが非常に難しいのですが、シリーズ主人公のはずの島田はいつ登場するのだろうと待ち構えていたのに思った程出番がなくて彼は本当に主人公だったのだろうか? と思ってしまったのですが、ラストによると、今作は外伝的なくくりになりそうな不思議なポジションのようですね。
帯にも「シリーズ最驚の異色編」と書かれているので謳い文句に偽りなしと言うところでしょうか。
「占星術殺人事件」と同じく京都の地名が結構出てくるのですが、京都の地理がよくわかっていない人間からすると立地がよくわかりませんが主人公が結構歩き回るのが新鮮に感じました。
館内クローズドではない作品という意味でもシリーズの他作品と比べると異色ですね。
ラストで思わず「そうきたか!」と口に出してしまう程驚かされた一作でした。