ROSEの読書感想文

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文豪たちが書いた 泣ける名作短編集(彩図社)

 教科書に載っているような文豪達の教科書に載っていたりいなかったりする作品を集めた短編集です。
 
 有名作ばかりなので今更ネタバレもなにもないと思うので、特に印象の強い作品ふたつについて感想を書きます。
 
 というか「泣ける」の方向性が所謂感動ものと違って、なんとなく不快感すら抱く方向性に感じられる作品が多数あります。
 
 
 まずは太宰治の「眉山」です。
 私小説のような雰囲気で、金もないのにつけで飲みに行き、そこで懐いてくれている従業員を疎んじ、仲間内で馬鹿にしていたりします。酷いあだ名まで付けていました。
 その後、その疎んじていた従業員が実は大病を患っていたと耳にし、衝撃を受け「いい子でした」と漏らすのです。
 
 今まで散々馬鹿にしていた相手に対して「いい子でした」とコメントするのは自分が人でなしだと思われたくない保身の気持ちも大きいのでしょう。
 太宰作品は好きな作品も多いのですが、この作品は非常に気持ち悪く感じてしまう作品でした。
 普段陰口を言っている相手が退職するときに花束や寄せ書きを率先して用意する人の様な嫌な気分になる主人公だと感じてしまいました。
 
 
 もう一つ、学生の頃にも一度読んだことはあったのですが、何度読んでも衝撃なのは森鴎外の「高瀬舟」です。
 尊厳死をテーマにした作品と言われていますが、どうしようもなく悲しくなる作品です。
 弟殺しの罪人として裁かれ、護送される喜助がどうして弟殺しをしてしまったのかという話にはなるのですが、状況と理由を考えると、それを罪と呼べるのかというのが度々語られるテーマだと思います。
 実際国語の授業でこのテーマについて語り合ったこともありましたが、未だに明確な答えが出ません。
 ただ、自分が弟の立場であればきっと同じことを願ったのだろうなと思います。
 
 他にも宮沢賢治芥川龍之介など教科書で飽きるほど見た名前がぞろぞろ並んでいる短編集なので文豪達の名作を読み直すきっかけになった一冊でした。