ROSEの読書感想文

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殺人鬼探偵の捏造美学 (講談社タイガ)

 真相を【捏造】する探偵。
 
 とんでもない探偵だな。と思うのですが【殺人鬼】探偵なんですよね。
 本編の主人公は新米刑事の女性なのですが、物語自体の主人公はこの殺人鬼の方といってもいいでしょう。
 この作品は【連続殺人鬼】が【探偵】という珍しい構造をしており、しかも推理するように装い真相を捏造するのが自分がやらかした事件というとんでもない探偵ですね。
 新米刑事は丸め込まれてもそんな真相で納得できるか! というような推理を披露されたあとの第二の種明かしが仕込まれた構造になっています。
 そう考えると主人公(刑事の方)は細かいこと結構気づいている割に真相に一歩届かない惜しいキャラですね。シリーズなら彼女が大活躍して真相に届くこともあるのかもしれませんが、続刊は出ていないようなので単発作品なのでしょう。
 
 制服を着れば女子高生で通じてしまうような童顔な主人公は囮捜査の格好のまま警察手帳を見せて現場に入ろうとしても玩具だと思われ摘まみ出されそうになるだとか細かい部分でキャラ立ちしているなと思ったのですが、その後彼女の外見に関する容疑者などの突っ込みはなく残念でした(スーツ効果?)
 
 真犯人が最初からわかっているタイプの作品なので、推理に当たる部分は真犯人が誰に罪をなすりつけ、どういう状況で事件が起きたことにするのかといったところでしょうか。
 
 容疑者全員クズという誰がロストしても全く心が痛まない親切(?)構造ではありますが、主人公の過去を考えると探偵のクズっぷりが際立ち過ぎて早く捕まれと祈らずには居られません。
 
 警察の情報が筒抜けすぎる情報屋など気になる部分も多いのですが、その辺りはキャラクター小説と割り切れば、探偵の美貌で誤魔化されているのだなと無理矢理納得します。が、あの情報屋、探偵だけでなく殺人鬼側でも協力者なんですかね? という疑問が残っています。
 殺人の助手が探偵の助手はそれでありな気もしますね。
 連続殺人鬼の犯行隠匿を協力する情報屋、表向きの探偵行為にも手を貸す助手。
 ありですね。
 
 連続殺人鬼は謎の拘りが多い、自分の手順を儀式化するから署名的な行動が必ずあるというのはプロファイリングの本などでもよく見かけるのですが、署名的な行動の為に事件を捏造するというのは面白いので、続刊が出るなら読みたい作品です。