ROSEの読書感想文

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恐怖の構造 (幻冬舎新書)

 恐怖について感覚的に考察する一冊です。
 
 ホラー作家の方が主に主観で恐怖を考察するのですが、例に出される作品が既にマニアック過ぎて相当触れてこないと理解できないのではないかと思いました。
 
 興味深いのは蛇に対する恐怖についてです。
 地を這うから、手足がないのに動くから怖い。心理的な嫌悪があるという説です。
 先日読んだ「恐怖と不安の心理学」では蛇に対する恐怖は「本能に刻まれている」「人類が長年蛇と戦ってきたから」という説がありました。
 つまり、蛇は見た目でも嫌悪され、生命の危機として本能に刻まれているから恐怖する人が多いのでしょう。
 
 帯に書かれている「日本人形はなぜ怖い」という謎については不気味の谷現象だと作者さんの考えが添えられていますが、個人的にはやや納得がいかない部分になりました。
 
 エクソシストやサイコなど有名な映画を例に恐怖について語る内容もあるのですが、もっとマニアックな作品も多々登場し、その映画を観てみようと思っても配信すらされていないからハードルが高い。というような例が多いです。
 ネタバレになるから語れません→詳細確認しようとしても作品がみつかりません
 みたいな構造ですね。
 
 ヒッチコック作品について語られている部分は嬉しかったです。
 
 ホラー創作の参考になるかという部分は、ひとつだけ「ホラーというジャンル」で参考になるかなと思ったのが、「気の緩みを作る」という点です。
 最初から最後まで死体がバンバン登場するぜって映画はインパクトはありますが、途中で飽きます。というか、過剰過ぎてコメディにしか見えません。
 ホラー映画でこのシーンは必要なのかというような日常シーンだとか、見間違えで安心するシーンが挟まるのは「気が緩む瞬間」を作ることでその後の恐怖が際立つという手法なのでしょう。
 あとはもう他の創作論の本で散々語り尽くされた内容だったかなと思います。
 最後の対談はなくてもよかったかなというのが正直な感想です。
 
 作者さんのファンでその生い立ちなどに興味がある人は序盤の生い立ちストーリーなどをとても楽しむことができるのではないかと思いましたが、名前を知っている程度でそこまでのファンではなかったので、期待した内容とかけ離れていた期待外れの一冊だったかなと思いました。