元カノが転校してきて気まずい小暮理知の、罠と恋。 (ガガガ文庫)
ラブコメと言うよりは「恋愛小説」という印象の一冊です。
自分を振った元カノが転校生として現れ、しかも同じクラスの隣の席という状況で大変気まずい主人公はどちらかというと非モテな恐竜マニアで自分の世界に籠もるタイプの男子です。
物静かでやや押しに弱い。自分の意見は口には出来るけれど勢い良すぎる相手には引っ張られてしまうので元カノの今カレや名物先輩に引っ張り回されてしまいます。
ラノベにありがちなヒロインの重い背景、主人公の抜け落ちた記憶などもありますが、全体を通してバランスがよかったかなと思います。和菓子屋の名物先輩のキャラが濃すぎて強引すぎるのがやや気になりましたがああいうキャラがいないと主人公はたぶん停滞して終わるタイプですね。
今作は主人公が恐竜マニアなだけあり、恐竜ネタがこれでもかと詰め込まれ、恐竜が非常に重要ポイントになっています。恐竜好きな人はそういった面でも楽しめるでしょうし、恐竜に興味がなくても恋愛小説として楽しめると思います。
こんなタイトル前面で「元カノ」なんて記載されている本を手に取るのは初めてで、登場人物の「元カレ」「元カノ」がうわーっとなる場面もあるのですが、ドロドロギスギスするような面もなく、気まずくなるのは主人公と「元カノ」だけなのでふた昔前のケータイ小説のような泥沼が苦手な人も安心出来ますね。
普段は小説の登場人物の名前はあまり気にしないで(覚えないで)読んでいくのですが、この作品は主人公と「元カノ」の名前が変わった響きで面白いなと思いました。
タイトルの「理知」ってなんて読むのかな? と思ったらそのまま「りち」でなんだか響きがかわいいなと思いました。
長く積んでいた割にさらっと読めて読みやすい一冊でした。
別レーベルの別作品のスピンオフらしいのですが、作中にちらっとそちらのエピソードが書かれている以外は気にせず読める作品だったのでむしろその別作品エピソードをまるごと削っても成立したのではないかなと感じました。