ROSEの読書感想文

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魔眼の匣の殺人 (創元推理文庫)

 特異能力があることを前提としたミステリ(?)第二弾。
 
 前作はホラー寄りでしたが、今作はSFっぽい印象です。
 
 主人公は相変わらず学食でなにを注文するか推理するゲームを続けていますが、パートナーを失った傷はまだ癒えていない様子です。
 新パートナー(?)な探偵役も自分の体質に怯えているような描写も目立ちますが、とりあえず主人公をからかって遊べる程度には信頼関係を維持しているようです。
 
 キャラクターとしては主人公(ミステリマニア、助手枠)がヒロイン(探偵枠)をミステリ教育しようと課題図書を押しつけミステリ用語やパターンを叩き込んでいこうとする描写が興味深いなと思いました。事件ではあんなに推理出来るのに推理小説にはしょっちゅう引っかかるというヒロインがかわいいですね。
 
 今回は田舎の元研究施設に閉じ込められ、そこで殺人事件が起きるというパターンなのですが、容疑者候補の一人もミステリマニアらしく「ミステリのネタバレをするな」と発言をするところがメタっぽくて好きでした。
 実際ミステリをたくさん読む人ならそういう要素を見つけやすい構造だと思い、ついうっかり「これ○○に出てくる××だ」なんて言ってしまいそうになるものもあります。
 
 事件としてはこの期間に男女二人ずつ死ぬと予言したサキミ様と、異変が起きるかなり直前に異変の内容を絵に描く(主に不吉な内容)少女の二つの「本物の予言」がベースになっており、誰も幸せになれない事件で悲しい気分になります。
 誰も得しない。こんな理由で。
 ミステリなんてそんなもんと言われてしまえばそれまでですが悲しくなってしまいました。
 
 前回の事件はもっとスリラーな印象はありましたが、今回はクローズド(全開もクローズドと言えばクローズドですが)で身動きが取れないながらも、緩みの部分は多かった印象です。
 人が死んでいく作品だからしょーがないとは思いつつ、皆さん結構悲惨な死に方でエドワード・ゴーリーの絵本くらい悲惨に感じました。
 
 シリーズはまだ続刊があるようですが、文庫化されているのがこちらまでのようで続刊を文庫待ちするかやや悩んでいるところです。