雨月先生は催眠術を使いたくない (角川文庫)
確実に続編を意識している作り……!
ジャンルが凄く悩むキャラ文芸というところでしょうか。
主人公が倹約家で兄弟のたくさん居る女学生、先生が准教授というコンビですが主人公二人とも癖が強いです。
先生は他人の記憶を思い出させ、聞き出すことに特化した催眠術(超能力に近そう)を使える人物ですが、教え子(ヒロイン)にはなぜか通用しないと。
ヒロインが友達が陰謀論にハマってしまったのを助けたいと先生に相談するところから話が進み、でこぼこコンビが出来上がるわけですが、この二人、結構いいパートナーだなと思いました。
フタリソウサでいうところの探偵が先生、助手がヒロインですね。
この探偵の異常な癖までしっかり描かれ、特殊能力もある。ぴったりじゃないですか。
そしてこの助手、しっかり食らいつきます。
実質フタリソウサですね。
しかもシナリオ3本分! お得! というTRPG解釈しました。
テンション的にもフタリソウサリプレイを小説化したらこんな感じかなというのに探偵の背景をがっつし盛ったような構造でした。そして助手側の背景があまり描かれていないので続編を意識した構造ですね。
興味深いなと思ったのが、先生が研究室(?)に隠し部屋を作っていて、時々幼児化する部分があるのですが、それを後半で一応解答があるっけれど解決はしていないという点ですね。やっぱり続編意識してる……。
心理学的な話はたくさん出てくるのですが、心理学素人のヒロインに先生や先輩が解説してくれるスタイルなので自然に情報が入ってきますね。先生と教え子パートナーだとこういう解説がしやすくていいチームになりますね。
タイトルに催眠術が入っては居るけど、そこまでオカルトでもなく、どちらかというとカルトと戦うという雰囲気ですね。
それにしても、陰謀論犯罪手口はこんなのありそうという感じで、凄く現代的な犯罪だなと思いました。
犯罪者のテクニックは内容自体は古典的でも少しずつ時代に合わせて変化していくので当事者になると見破りにくくなるのかななんて思ったりしました。
続編出るでしょうから楽しみな作品です。