ROSEの読書感想文

読んだ本とかWeb小説の感想を書くよー

処刑エンドからだけど何とか楽しんでやるー! (レジーナブックス)

 所謂悪役令嬢物のひとつである今作は主人公が檻の中に居る時間が圧倒的に長い(というかほぼ檻の中で話が進んでいく)作品です。
 牢屋で前世を思い出したところで最早打つ手なし……。普通であれば絶望し、もっと悪くすれば発狂してしまうでしょう。

 ですが、この主人公はここからかなり前向きに楽しむ図太さを持ち合わせていました。

 キャラクターに関して言えば熱血神父と強かな乙女ゲームヒロインが特に印象的です。

 まずはヒロイン。

 彼女もまた主人公と同じ武器を持っているはずなのにどこかポン……そして困った時に主人公に泣きつけるだけの図太さを持ち合わせています。こうなると不思議と憎めなくなりますね。

 こういった悪役令嬢物であれば同じ条件を持っているゲームヒロイン枠は悪役として描かれることが多いので、このヒロインに関しては好感が持てます。

 が、彼女も間違いなく狂人枠に含まれるでしょう。どんでん返しでやられた気分になるヒロインです。

 そして情熱空回り熱血神父ですが、信仰に生きる熱い男(筋肉)という印象で、あれ? 職業はバトルモンクですか? と言いたくなってしまうのですが、布教活動に熱心すぎるだけのいい人です。

 主人公がうっかり滑らせる前世の知識で布教活動を加速させていくのに手柄を自分の物と独占しない良心を持ち合わせていると考えると人格者、なのでしょうが己の正義を過信しすぎているように見える点も興味深い人物です。

 これは好みの問題なのでなんとも言えない部分ですが、サブキャラがとても魅力的すぎるせいか、メインヒーローが霞んでしまうというか、ヒーロー自体にはそこまで魅力を感じませんでした。

 主人公の元婚約者はまさに悪役令嬢物のテンプレという行動。これ、ルーインブレイカーズだっけ? という、彼が主人公になってもおかしくない破滅ルート。

 主人公(前世が入る前)もやらかす系令嬢であるけれど、元婚約者、こんなのが王太子で大丈夫かこの国となってしまう典型的なキャラクターで、読む前に登場人物の立ち位置が理解出来る安心感のようなものがあるのではないでしょうか。

 テンプレにひとひねり加えられたゲームヒロインが魅力的でした。

 主人公が霞むほどに。

 主人公は主人公で歴史に名を残すほどのことをしているはずなのですが、サブキャラが強い作品でした。