呪いを、科学する(ディスカヴァー携書)
呪いだなんて穏やかではない。けれどもそれらは日常の中に溶け込んでいる。
タイトルでは「科学」と書かれていますが、超常現象的な呪いを科学的に解説する本かと思うと些か期待外れという印象です。
コンパクトながら守備範囲が非常に広いと言うべきか、超能力や奇病、怪物について科学的、或いは民俗学的な観点で注目している点については非常に興味深い内容になります。
この本を読んでいた時に思ったのが、旧約聖書のレビ記にある「清いものと汚れたものに関する規定」などは感染症やアレルギーリスクの高いものを除外していくような意味を持っていたのではないだろうかということです。長い間伝わっている物にはそれなりの意味があるので、科学以前はそう言った表現で退けてきたのだろうと言うことです。
面白いなと思ったのは「内」の呪いの章にある、輸血に関する考察です。
現在でも輸血が100%安全とは言えません。血液型の問題や、血液による感染症などたくさん考えるべきことがあります。
今で言う、血液感染や抗原の不一致によるショック症状などを呪いと表現してしまう時代があったと考えるととても興味深く感じました。
三章の「未知」の呪い の章では所謂オカルトについて記されていますが、この部分はやや情報不足のように思えました。
オカルトを科学するのであればこの章を本書一冊分のボリュームで書いてもまだ書き足りないでしょう。かれこれ四十年ほど前の「エスパー入門」の方がまだしっかりとした内容に思えるほど物足りない章でした。
例えば超能力で有名な「スプーン曲げ」ですが、これをテコの原理で片付けてしまうのは些か不親切です。それ以外のパターンについて触れないのは「科学する」というタイトルとしてやや問題があるような気がしてしまいます。
スプーン曲げと言えば、中学校時代に同級生の女の子が力尽くで給食用スプーンを曲げてしまい担任がとても驚き、学年主任に叱られた事件を思い出します。純粋なる力尽くでもへし曲げることが出来てしまうようです。
折角超能力の章であれば、念力訓練でよく言われる、ダイスの狙った目を出すようなものも取り上げてくれればより深い内容になったかもしれません。
一部のTRPGプレイヤーはダイスの振り方に癖があり、常に同じような数字ばかり出てしまうケースがあるのだとか。
それがダイスの女神の呪いなのか、単純に振り方の癖なだけなのか。
そんな事件も科学的に解説できれば面白いなと思います。