転生侯爵令嬢奮闘記―わたし、立派にざまぁされてみせます! (レジーナブックス)
肥満キャラはとりあえずダイエットからという風潮は嫌いです。
折角動ける豊満ボディなのにダイエットだなんて勿体ない!
思わずそう思ってしまいましたが主人公は両親までダイエットさせてしまうのです。
異世界転生もののどう見ても悪役令嬢っぽい侯爵令嬢に転生してしまった主人公なのですが、所謂乙女ゲームものと違うのは、彼女が「乙女ゲーム」の「悪役令嬢」とは明記されていない点ですね。
勿論主人公は前世(難病で入院・ラノベ予備知識満載)的なよくある設定なのですが、最早悪役令嬢と言うよりは健康マニア。健康豆知識が飛び出る飛び出る。
難病で命を落とした設定より健康マニアがそのまま転生した設定でも十分通用するレベルの健康マニアです。転生先の両親にも健康に長生きして欲しいとラジオ体操やら休肝日やらを叩き込む健康マニアです。
そして乙女ゲームのテンプレ展開的「ざまぁ」を少しでもマイルドにしようと奮闘するのですが……。
金に物を言わせる、札束でビンタする系貴族令嬢は強い。
金持ちなのに金儲けをするというか、資源の有限性を理解して活用していける経営力のようなものを持っているっぽいのです。
元が努力家だし婚約者に嫌われているわけでもなかったので別に主人公が転生しなくてもこの令嬢生き延びられたのでは? というほど主人公が転生したメリットが浮かびません。むしろ元のユリアンヌが可哀想に感じてしまいます。
メリットと言えば占い師(?)のゴンザレス先生に救われたご令嬢方くらいなのではないでしょうか。
婚約者とのすれ違いも経済力の差が大きいというか、そもそも婚約に至る経緯が国に金を積むというとんでもない侯爵家。
ストレス太りで肥満になった主人公というのも近頃では珍しくないのですが、きちんと動ける肥満体型というのは素晴らしいですね。
プラスサイズにはプラスサイズの魅力があるのでその辺の魅力を強調してくれればよかったのになぁとプラスサイズ好きは思うのです。
サブキャラの恋愛も非常に多く描写されており、メインヒーローがやや出番が少ないようにも思えました。
今作一番の注目ポイントはユリアンヌの婚約者であるアルフレッド王太子による「デブ」の表現集でしょうか。よくまあこんなに言い回しをとっさに変化させられるなというほどの表現に思わず声を上げて笑ってしまいました。
はい、今作はシリアスなど微塵も感じさせず、コメディ全振りした異世界転生令嬢ものです。
笑いながら健康知識を身につけられ、ついでに悪役令嬢ものっぽい雰囲気を楽しめる……そんな作品だと思います。