こうして彼は屋上を燃やすことにした (ガガガ文庫)
ラノベセットに入っていた中の一冊です。
不思議なタイトルだなと思い手に取って見ると結月ゆかりのイラスト描いている方の表紙? と驚きました。
それはさておき感想です。
前提としてオズの魔法使いを理解していた方が楽しめる作品でしょう。
主人公は彼氏にフラれ、そのショックで自殺しようと屋上に出たところで奇妙な三人と出会います。それぞれが自殺志願者という奇妙な集団ですが、そこでドロシーと呼ばれるようになり、オズの魔法使いのように足りない物を求めていくようになります。
テーマは重めです。
自殺の理由もそれぞれ重いのですが、ストーリー軸はオズの魔法使いそのものという印象で、皆初めから持っているけれど気づいていない足りない物を取り戻していく話になります。
主人公ドロシーについては、いつまでも元彼を引きずるような未練たらしい女でやや苦手な印象ではあるのですが、友人のために動くことが出来る行動力があります。
好きなシーンはライオンの髪を染めるところでしょうか。
ブリーチ二回もしたら頭皮のダメージがきつそうだとか、女子トイレで洗い流すとか新たないじめの原因を作りそうだとか考えることもありましたが、会話のやりとりもテンポよいシーンでした。
ブリキとの会話で「与作」が出てきたところも少し驚きました。
自分の学生時代を振り返っても同級生に演歌歌手の話をして通じたことがなかった気がするのでさらっとそういうネタが飛び出すブリキは歌謡曲が好きなのかもしれませんね。
エンディングにはやや突っ込みたい気分にはなりましたが、それぞれが大切な物を取り戻していくという元ネタに忠実な構成は好きでした。
元ネタであるオズの魔法使いを読み直してみるきっかけになるかもしれないと思った一冊でした。