ROSEの読書感想文

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犯罪社会学者・椥辻霖雨の憂鬱2 十年の孤独 (メディアワークス文庫)

 
 前作を読んだのがだいぶ前になってしまうのですが、一応シリーズ物の二巻目になります。
 主人公は犯罪社会学者という少し変わった人物で、非常に理屈っぽいというか蘊蓄をやたらと語りたがる傾向にある男性です。
 歳の離れたはとこと探偵とその助手のようなことをしていく形式になります。
 
 今作は非常に道徳的、倫理的なテーマになると思います。
 犯罪者が刑期を終えた後や被害者家族と加害者家族、犯罪者に対するネット攻撃、そして冤罪と自白の強要。
 海外ドラマで「殺人を無罪にする方法」という作品がありますが、主題としてはそれと似ているのかもしれません。
 裁判で有罪になれば犯罪者、無罪になれば犯罪者ではないのです。
 法律上は刑期を終えた人間はもう罪人ではありません。しかし、人間感情としてそう言った人を避け、社会復帰の機会を奪ってしまったり、加害者家族に対する攻撃などという、本人にはどうしようも出来ない部分で起きてしまう被害もあります。
 そう言ったテーマを考えつつ、過去の事件(有罪になった人物は既に刑期を終えている)の再調査が今回の物語です。
 
 今作の面白い部分は主人公の講義から各章が始まるところでしょうか。
 地の文が主人公の講義で語る内容になっているのですが、学生の興味を惹くことに苦戦しているような様子が目に浮かびます。講義内容としては興味深いのに話が逸れたり話し方が退屈さを増すような雰囲気がこういう教授が居そうと思わせる部分です。
 主人公は学者という地位を特別視していないので、こういった点は好感を抱きました。が、話し方がまどろっこしいです。こんな話し方の人とはあまり関わりたくないなと思わせてしまうような言い回しも多々あり、口癖なのか「寡聞」を多用している印象です。あまり使う人に遭遇しない言い回しですね。
 
 犯罪社会学者と幽霊の見える少女という少し変わった探偵と助手スタイルですが、ある程度の信頼関係もあり揉めることなく話が進んでいきます。
 二人の年齢差もあり、時々講義のように感じる場面もありますが、主人公なりにはとこの保護者として大人の立場を取ろうとするなどの葛藤も感じられます。
 
 謎解き要素は多いですが、所謂探偵物と言うよりはキャラクター小説なのかな? という印象の作品になります。
 主人公のクセが強い。