時計館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)
館シリーズ(文庫版)初の上下巻構成ですが、今回は時計がテーマの館です。
ロマンの塊ですね。
十角館に出てきた江南くんが久々の登場です。すっかり社会人になった彼ですが相変わらず死神に溺愛されているのか巻き込まれ体質ですね。
今回の館は非常に大きいと言いますが、新館、旧館に別れています。
館を見た時に少しうそうま卓さんの『二つの館』というシナリオを思い出しました。(クトゥルフ神話TRPGのシナリオです)
これだけシリーズを読んでくるともうこれ以上変な館は出てこないだろうと思うのですが、今回は今まででダントツ変な館と言いますか、時計型配置の部屋とか実用性を考えると滅茶苦茶不便そうな館ですね。迷路館とどっちが変かといい勝負な気がします。
学生のミステリーサークル(超常現象の方)と出版社のオカルト雑誌編集班が変な館で降霊術をしましょうというところから始まる今作ですが、とにかく死体がたくさん出てくる。
もう犯人ノリで殺してない? ってい言いたくなるレベルで死体の山が出来ている。
大ボリュームの本文に特盛りの死体です。
それだけ死体が多いのだから犯人もやることが多い!
十角館の時も犯人超忙しいと思いましたが、今回の犯人もとにかく忙しいですね。
そして大どんでん返しというような衝撃のトリックと犯人にやられた……と悔しい気分になりました。
今回は時計をテーマにした館だからか、島田さん(鹿谷さん)の折り紙も時計が出てきます。砂時計に振り子時計(試作品)が。
どんな形なのか想像出来ません。
他にもとにかく折り紙のバリエーションが出てきて、そのシーンはなんだかほっこりします。こちらは是非実物写真を挿絵挿入して欲しいですね。
車に乗っている三つ首の鶴なんて初めて見る人は相当ぎょっとしてしまいそうです。
時計館なだけあり、時間がとても重要なキーワードになる作品です。
トリックだけではなく、登場人物の過去や記憶など読者側も注意する点が多くなる作品ではないでしょうか。
久々に全力でやられたと言いたくなる作品でした。