ROSEの読書感想文

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新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)

 

 ミステリ必読書リストにかなりの頻度で加えられているこちらの作品ですが、タイトルが既に強烈なインパクトです。

 事前情報としてかなりグロいと聞いていたのでグロ耐性が低い身としてはドキドキしながら読んでいましたが、内藤了さんの作品などと比較すればまだソフトな描写だったので身構えたほどではなかったという印象です。

 

 今作の解説にやたら「十角館の殺人」の話題が出てくるので、両方未読の人は先に十角館を読んでおくとニマニマできるかもしれません。

 

 今作は所謂叙述トリックと言われる分類になり、それの代表作レベルで有名作品、らしいです。

 最初から犯人の名前はわかっており、三人の視点で交互に語られていくスタイルです。

 犯人、犯人の家族、元警部の三人の視点で語られるわけですが、犯人以上に犯人の家族である雅子が怖い。彼女の存在がこれはホラーだったのか? と思わせる恐ろしさです。

 

 この作品の感想を語っている人は星の数ほどいそうなので、こちらではこの雅子の怖さについて語りたいと思います。

 彼女は加害者家族です。自分ではどこにでもいる善良な市民、善良な主婦、善良な母親だと思っているタイプの女性で、特に息子の性教育に熱心というか、そう言ったセミナーに通ってしまうような息子に対して過保護な女性です。

 過保護という表現が不適切に思え、性的虐待に近い次元で干渉しているようにさえ思えるのは、彼女が大学生にもなる息子の部屋に無断で侵入しアレな本からゴミ箱のティッシュまで確認、自慰の回数まで把握しているという恐ろしい母親なのです。

 しかも、本人悪気なし。自分は息子のために、家族を守るためにやっていると思い込んでいる。夫は家庭に無関心だし、子供達は私たちの子供ではなく私の子供と言い切ってしまうような女性です。

 そして彼女は息子の部屋で不審物を見つけ、息子が犯人なのではないかと疑い、ひとりで悩んで悩んで、悩んだ挙げ句……息子は病気だから治療を受けさせないと。でもどうやって? 事件のことを周囲に知られないように……という思考に入れる道徳よりも私の平和が大切タイプです。

 怖い。

 偏見だけど、洋画に出てくるオペラと古典しか娯楽を許さないような上流階級の熱心なクリスチャンみたいな変な方向の潔癖を持った女性だなと思いました。

 興味深いのは娘に対してはそこまで過干渉ではない点です。

 やはり母親というものは男女で接し方が変わるのでしょうか?

 男は生まれ持って犯罪者予備軍のような思想を持った女性なのだなと感じさせる人物です。

 

 事件内容自体はクルミナル・マインドなどで散々見たようなパターンなのでさほど驚きはないのですが、雅子という女性の恐ろしさが、彼女視点に戻る度にぞわぞわしました。

 

 オチは途中で予測出来たのですが、雅子怖い。雅子という女性がどうなるかというところでイッキ読みしてしまう作品でした。

 

 いやぁ、女性怖いですね。