黒猫館の殺人〈新装改訂版〉 (講談社文庫)
新年最初の一冊はやっぱり館シリーズでした。
今回はなんだかメルヘンな名前の館だなと思ったのですが、思わず「黒猫ってそっちかい」と口にしてしまいました。
今作は手記と記憶喪失の依頼人とのやりとりが交互に進んでいく構成です。
が、手記の内容が違和感んんん???という感じなのが特徴です。
帯やあらすじを見ると舞台が北海道っぽくて道民としてはテンションが上がるのですが、北海道が舞台のはずなのに熊が出ないと断言しているシーンがあるのですよ。
この時点で作者さんが北海道を舐めているわけでなければ舞台が北海道ではないのだなと解釈する道民です。
札幌市内でも熊が出るのに人里離れた立地で熊が出ないはずないじゃないか。そんなひっかかりでモヤモヤしながら読み進めるといろいろ違和感が広がっていきます。
普段はあまりオチにまで触れないようにするのですが、今回は「そんなばかな」と言いたくなってしまうというか、無理矢理手の込んだミスリードを作り続けました感があって今まで読んだシリーズの中で唯一のハズレという印象がついてしまっています。
そして死体も少ない。
メルヘン要素を取り入れてちょっとした冒険をしたのか建築家の遊び心を表現したのかはわかりませんが、うーん……事件内容、動機、そして館のトリック含めて微妙……という印象になってしまいました(他が凄すぎたのかもですが)
次巻どうしようかな……と悩んでしまいましたが、たぶん続きも読むでしょう。
好きだったポイントはちょいちょい時計館の話題が出てくるところでしょうか。ちゃんとシリーズが繋がっているというか、同じ世界観なのだなというのが島田の視点意外の情報でも伝わってくるところがシリーズを読んでいる身として嬉しくなったポイントであり、あの館の関係者って今どうしているんだろう? 的な情報も今後入ってくるのかな? という期待にも繋がりました。
今回の黒猫館は童話、怪奇小説の知識下敷きがないと微妙に楽しめない部分もありそうです。が、その辺りの下敷きがある人は展開に気づくのが早くなってしまいそうですね。
全体的にあそこのなんとかという描写あったでしょ? これこうなんだよ的な流れが少しくどすぎたかなと思いました。
キャラクター小説と見ると登場人物達が際立って魅力的だと思います。
そしてシリーズ中で最推しはエラリイさんなので回想シーンでもいいので再登場して欲しいと祈るのです。