ROSEの読書感想文

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迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)

 シリーズ順で言えば水車館の方を先に書くべきなのでしょうが、記憶が新鮮なうちにこちらの感想を書きます。

 

 今作、一番衝撃だったのがカバー折り返しの「本文図版 小野不由美」の文字です。

 思わず水車館も確認したらそうなってた……と一番驚いた部分だったので、カバーは折り返しまでしっかり確認しなくてはいけませんね。

 館シリーズは建物に隠し部屋、隠し通路があることが前提のシリーズですが、今回の迷路館は今まで以上にこんな建物建てられるの? と疑問を抱きました。

 地下? 舞台日本だよね? 地震とか大丈夫?

 というのが最初の疑問。そして神話モチーフの迷路……。

 こんな家はとても不便そうですね。各部屋にトイレがあるっていうのはそういう配慮なのかな? と考えてしまいました。

 

 肝心な物語の方ですが、今作は8割以上を島田が読んでいる小説という形で構成されています。作中作のタイトルがそのまま本作のタイトルというところがややこしく、ノベルス風のレイアウトになっているページが存在するなど所々遊び心が感じられます。

 本文よりも先にあとがきを読むという島田の性格を表現するためか、本当にあとがきを先に記載してしまうというのも非常に面白いと感じました。

 また、登場人物の多くが推理作家であり、作中でも書きかけの作品が登場するなど、大変忙しい作品だと感じます。

 つまり作者さんは数人分書き分け出来ていないといけないわけですね。とても大変な作業です。

 時代背景が時代背景で、当時は最新だったワープロ(最早絶滅種?)も複数の機種について語られるのですが、その時代を生きていないとイマイチピンとこないかなと思いますが、かな入力とローマ字入力の他にメーカ特有の入力方法があるなどと、当時の様子がなんとなくわかりそうな描写は興味深かったです。

 相変わらず携帯電話がない時代なので電話線を切るなんて描写があったりしますね。

 現在でも地下だったらもしかすると電波が届かないところもあるのかな? とも思いますが、やはり、こういった推理小説の舞台条件は携帯電話の登場でよりシビアになってきたように感じられます。

 今作は作者さんの表現によるところの「額縁小説」とのことで、ネタばらしの後にどんでん返しが来るという非常に捻りの効いた作品だったと思います。

 そして、新装版解説を書いている方が折り紙作家というのも面白いと思いました。作中作の中で島田が折っている趣味と呼ぶにはあまりに職人技過ぎる折り紙作品の作家さんが小説の解説を書いているというのはとても不思議な縁ですね。そして、実物作品の写真も掲載されていました。

 本当にこれは折り紙なのか……と衝撃を受けました。

 

 最後の最後でこれはずるい……と叫びたくなってしまうような構成でしたが、結構なボリュームがあるわりに一気に読めてしまう作品でした。