暗黒騎士の俺ですが最強の聖騎士をめざします (GA文庫)
こちらの作品はかなり前に一度コミカライズ版を読んだことがありましたが、全体的にテンションが高めです。
舞台設定はゲームっぽいファンタジー世界ですね。FEとかに出てきそうなジョブがたくさんあります(FEとはちょっと違うけど)(バトルモンク欲しい)
暗黒騎士としてほぼ最強の主人公(聖属性アレルギー)が聖騎士を目指すという設定だけでも面白いのですが、この聖属性アレルギーが本当に面白いです。
本来であれば回復魔法のはずの「手当て」を受けようものなら回復魔法が攻撃になりかえって止めを刺されそうになる構造です。不便……。
そして主人公の家族も中々濃いキャラです。
食事の席で毒を盛られることが日常茶飯事だとか、白い制服を着れば目がやられるだとか……アダムス・ファミリーのようなコミカルでホラーチックな家族です。きっとお仕置きにディズニー映画を見せられたり「食べ物では遊びなさい」って教育を受けたりするのでしょうね(しないと思う)
ラノベ特有(?)のお兄ちゃん大好きお兄ちゃんべったりな妹が登場したり、無駄に絡んでくる幼馴染みがいたりと無意味に主人公周りに女性キャラが多いようにも感じられますが、あえて茨の道を進もうと努力を重ねられる主人公は一昔前の熱血少年漫画主人公のようで嫌いになれません。
本人は真面目なのに「うっかり」周囲を威圧して状態異常にしてしまうなど、本人にとってはやらかしパターンの笑いポイントも豊富で、サクサク読み進められました。
少し意外だったのは戦闘が理論的に行われているところでしょうか。主人公を初めとして周囲が戦闘についての意見交換をするようなシーンはよくあるチート系主人公の無双とは違い興味深いシーンでした。
先生もなんかいいキャラしていますね。
王道少年漫画みたいなストーリーでナルトだと思って読んだらドラゴンボールだった的な流れも少年漫画好きとしては楽しめたポイントです。
幸いなことに手元に二巻目もあったので続けて読み進めていきたいと思います。
恐怖と不安の心理学 (ニュートン新書)
専門書を期待していたらノンフィクション系? という印象を受けるほど、作者さんの体験をかき集めた一冊です。
息子と海でのエピソードから、出会った患者さんの話まで、主に作者さんの経験と主観で纏められています。
期待していたのはもっと生物学や医学的な、科学主体の解説書だったので、期待外れと言えば来たい外れだったのですが、一つ非常に興味深いと感じたエピソードがありました。
恐怖を感じない女性の話です。
脳の一部のエラーとでもいうのでしょうか。
彼女は恐怖を感じません。ホラー映画も怖くないし、犯罪に巻き込まれる危険性が高い場所もなにも考えずに足を踏み入れてしまうどころか犯罪被害に遭った翌日も同じ道を通ることが出来るほどです。
脅されるだとか怒鳴られるだとかそう言った類いの恐怖を全く感じない彼女ですが、そんな彼女でも恐怖を感じる場面があるのです。
生存本能に関わる恐怖です。
なにが起きても恐怖を感じなかった彼女も酸欠が近づくと恐怖を感じたという実験は人道的にどうなのかという疑問を抱きはしましたが、本人も同意の上行われたと言うことなので問題なかったのでしょう。
全体的に作者さんの主観で綴られており、科学的根拠などと言うよりは実体験と参考図書(時に映画)を引用しこういうことだと説明しようとしているようなのですが、タイトルで想像した心理学専門書というよりは雑誌のコラムを纏めた物というような印象でした。
ニュートン新書自体が初だったので、もしかするとそういう傾向なのかもしれませんね。
もう一つ面白いなと思ったのは、押し入れやクローゼットを怖がる子供が世界共通という点でしょうか。
押し入れが怖いだとかクローゼットが怖いと考えるのは文化背景ではなく本能的なものなのだなと考えられる面白いエピソードですね。
脱力して読むコラム集としては楽しめるかも知れませんが、恐怖を科学的に解説する本を期待していた身としてはやや期待外れの一冊でした。
俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する (ファミ通文庫)
タイトルの時点で好き。と言いたくなってしまう作品です。
こういう科学っぽいタイトルが付くと期待が大きくなってしまいますね。
そして、人生で読んだラノベの中で一番好きと感じた作品でした。
異世界転移なのに魔法適応ではなく魔法を科学的に理解しようとするスタンス。好きです。
右も左もわからない異世界を理解しようと試行錯誤する姿には好感が持て、なにより集団の強さ、変人集団の強さは異世界人を呆れさせる次元ですが、初めて見る魔法に大興奮し、それを再現しようとする過程が興味深かったです。
都合よく全ての専門が集まったというのは科学的思考のヒントが出やすい環境になったと思います。(これで生物系の専門家もいればいいのに)
一部下品すぎる罵り言葉のシーンもありますが、理系らしい回りくどいジョークや、男子学生特有の謎テンションによる意味のわからない遊び(なぜこんなことをしてしまうのだろう)の描写は涙が出るほど笑ってしまいました。
ブラコンの度が過ぎる妹キャラはやや気になりましたが、最早みんなの妹ポジションになっていたので嫌悪感を抱くほどではありませんでした。
ところでメインヒロインは誰なのでしょうか? ほぼ平等に出番があったように思えたので、メインヒロインが誰なのか少し悩みます。
ラノベセットに入っていた中の一冊なのですが、なぜか二巻が抜けて三巻が手元にあるので二巻を購入しようと思ったら品切れでした。
なるべく早めに次の巻を手に入れたいと思います。
死神ラスカは謎を解く (マイナビ出版ファン文庫)
カラスが好きなので表紙買いしてしまった一冊です。
カラスと会話する導入。それだけでときめきました。
主人公は刑事です。殺人などの凶悪犯罪を担当する刑事なのに好物がクリームパン。趣味は料理。
なんというか、ギャップがかわいいと感じさせるタイプです。
そして、カラスにクリームパンを分け与え、話しかけていたら、うっかりカラスが喋ってしまう……のですが突っ込みを入れていて驚き損ねるという少しうっかり(?)なところが印象的でした。
カラスは自称死神でなにかをしでかした罰で半分カラス、半分人間の姿で過ごしており、カラスの時間帯に主人公に食べ物を分けられた恩で事件解決の協力をします。
メカニック情報操作的な物を、カラスな死神というファンタジックな存在を使用して行うような構成で、四章で五つの事件を解決していきます。
わりと雑な理由で殺人が起こるので、金田一よりはコナンみたいな印象を受けます。
主人公が既婚者(妻を亡くしている)刑事で相棒がカラスという不思議な組み合わせが面白い上に、隙あらば惚気話をしようとする主人公は大切な人を失っているとは思えないほど明るく振る舞うやや空元気が過ぎるのかなと心配したくなってしまうような人物です。
探偵と助手で言うと、刑事が探偵枠、カラスが相棒枠、というところでしょうか。
この刑事、意外とちゃんと情報を得て自分の頭で考えるタイプで、便利過ぎる鳥相棒に頼り切りというわけでもないところが好感を持てました。
そして死神、カラスにされていることを屈辱と感じている反面、主人公に餌付けされる生活を気に入っているようにも見えるのが面白いです。でも人間の姿になったほうがおいしいものをたくさん食べれるから戻りたいかな? と思ってしまう程度には餌付けがどんどん進んでしまっています。
エンディング的にも続編が出来そうな感じなので、もしかするとシリーズ化するのかな? と感じました。
こうして彼は屋上を燃やすことにした (ガガガ文庫)
ラノベセットに入っていた中の一冊です。
不思議なタイトルだなと思い手に取って見ると結月ゆかりのイラスト描いている方の表紙? と驚きました。
それはさておき感想です。
前提としてオズの魔法使いを理解していた方が楽しめる作品でしょう。
主人公は彼氏にフラれ、そのショックで自殺しようと屋上に出たところで奇妙な三人と出会います。それぞれが自殺志願者という奇妙な集団ですが、そこでドロシーと呼ばれるようになり、オズの魔法使いのように足りない物を求めていくようになります。
テーマは重めです。
自殺の理由もそれぞれ重いのですが、ストーリー軸はオズの魔法使いそのものという印象で、皆初めから持っているけれど気づいていない足りない物を取り戻していく話になります。
主人公ドロシーについては、いつまでも元彼を引きずるような未練たらしい女でやや苦手な印象ではあるのですが、友人のために動くことが出来る行動力があります。
好きなシーンはライオンの髪を染めるところでしょうか。
ブリーチ二回もしたら頭皮のダメージがきつそうだとか、女子トイレで洗い流すとか新たないじめの原因を作りそうだとか考えることもありましたが、会話のやりとりもテンポよいシーンでした。
ブリキとの会話で「与作」が出てきたところも少し驚きました。
自分の学生時代を振り返っても同級生に演歌歌手の話をして通じたことがなかった気がするのでさらっとそういうネタが飛び出すブリキは歌謡曲が好きなのかもしれませんね。
エンディングにはやや突っ込みたい気分にはなりましたが、それぞれが大切な物を取り戻していくという元ネタに忠実な構成は好きでした。
元ネタであるオズの魔法使いを読み直してみるきっかけになるかもしれないと思った一冊でした。
盲目の公爵令嬢に転生しました (レジーナブックス)
主人公が盲目であることを除けば無自覚悪役令嬢もののテンプレのような構成の作品……なのですが……めっちゃ中途半端なところで終わるのです。
続刊出ていました。ナンバリングされていないのでこの終わり方は中途半端すぎる……。
ナンバリングなしでこの終わり方だと好感度が下がりますよね。
今作は主人公が盲目、なのですが、盲目設定をイマイチ活かしきれていないというか、盲目である必要はあったのかという疑問を抱きました。
点字ブロック的な物を用意してくれる両親やサポートしてくれる友人の描写はたまにあるのですが、主人公は普段(歩いたことがない場所でも)自分の足で歩いていますし、一応誰かが常についてサポートはしている様子なのですが……少し珍しい特徴ではあると感じましたが、あまり重要性は感じられませんでした。
個人的に好きだったのは、主人公が婚約者と出会ったときの、彼のクソっぷりでしょうか。わがまま王子にしろ暴言が過ぎる。
キラキラ王子に飽きていたのでこのくらいクソっぷりを見せてくれるとテンションが上がります。が、わりとすぐに改心&主人公に激甘婚約者になってしまいもうちょっとクソガキ期間が続いて欲しかった感がありました。
こちらの作品は主人公は転生者(原作知識なし)なのですがヒロインは転生者(原作知識あり)タイプで、ヒロインが原作通りの展開に話を持っていこうと試行錯誤するタイプなので、ヒロインが悪役な作品になります。
これ系ってヒロインは主人公(悪役令嬢枠)の敵か味方になろうとするパターンが殆どなのですが、今作のヒロインはなかなかいい性格をしていますね。
裏表の激しいキャラが好きな人間としては自分の手を汚すことも厭わないヒロインさん、えげつない嫌がらせも積極的に実行出来る真性「悪」な感じが非常にいい味を出していました。
が、エンディングがぶった切り感満載なのでこれはちょっとと思わずにはいられません。
異世界感を出したいからなのでしょうが「馬」がバイクのような物だったり、「弓矢」が銃の様な物だったりという単語の入れ替えのようなものは脳がバグるような感覚になってしまい、少し読みにくく感じました。
全体的にストーリー軸はテンプレ悪役令嬢ものなので、ぶった切り満載エンディング回避したい場合は続刊も揃えておいた方が楽しめると思います。
天久鷹央の推理カルテ (新潮文庫nex)
ずっと気になっていた作家さんで、こちらの作品が初になります。
作家さん本人のtweetばかりよく見かけるのに作風を全く知らなかったという。
読んでみた一番の感想は、ミステリというよりはキャラクター小説というところでしょうか。
作者さんが医者というだけあって、病院や病気に関する描写は力が入っているのでしょうが、やや不親切な印象を受けました。
たぶんこちらがシリーズの一巻目なのですが、主人公が上司(探偵役の女医)との出会い云々を前回までのあらすじダイジェストのように語っているのが気になり、中々導入に集中出来ませんでした。
個人的な好み出言うと探偵役の上司(鷹央)が強引すぎてあまり好きになれないタイプでした。
だいたい探偵物だと助手役の方が好きになる率が高いのですが、今回も助手役の部下(小鳥遊)の方が好印象でした。
構造的には小さい事件を一エピソードとしてシリーズ化したような作品です。
初手でいきなり「カッパ」が出てきた際はオカルト寄りなのかなとも思いましたが、あまりミステリ感がなく、キャラクター小説という印象です。
煽りにあった「メディカル・ミステリー」という表現で期待度が高すぎたのでしょう。どちらかというと平和でコミカル寄りな印象を受けました。
新人にまでからかわれいじりというよりはいじめのような扱いを受けてしまう小鳥遊の描写に不快感を抱きました(小鳥遊にというよりは彼に関わる周囲に対してですが)
鷹央に関しては「人付き合いが苦手」と表現されてはいますが、強引すぎ、己の好奇心のみに忠実という部分では、ドラマの「ドクター・ハウス」を連想しました。やっていることも病気の特定という意味では似ていますね。
とても超人的に描かれていますが、姉が怖いという弱点も添えられています。
が、人間離れしている部分ばかりが目立ち、宇宙人と会話しているように感じられるシーンが非常に多いです。
キャラクター小説として割り切れば楽しめますが、ミステリとして見た場合は期待外れという印象の作品でした。
残念なことに続刊も数冊積んでいるのでそのうち片付けます。