天久鷹央の推理カルテ (新潮文庫nex)
ずっと気になっていた作家さんで、こちらの作品が初になります。
作家さん本人のtweetばかりよく見かけるのに作風を全く知らなかったという。
読んでみた一番の感想は、ミステリというよりはキャラクター小説というところでしょうか。
作者さんが医者というだけあって、病院や病気に関する描写は力が入っているのでしょうが、やや不親切な印象を受けました。
たぶんこちらがシリーズの一巻目なのですが、主人公が上司(探偵役の女医)との出会い云々を前回までのあらすじダイジェストのように語っているのが気になり、中々導入に集中出来ませんでした。
個人的な好み出言うと探偵役の上司(鷹央)が強引すぎてあまり好きになれないタイプでした。
だいたい探偵物だと助手役の方が好きになる率が高いのですが、今回も助手役の部下(小鳥遊)の方が好印象でした。
構造的には小さい事件を一エピソードとしてシリーズ化したような作品です。
初手でいきなり「カッパ」が出てきた際はオカルト寄りなのかなとも思いましたが、あまりミステリ感がなく、キャラクター小説という印象です。
煽りにあった「メディカル・ミステリー」という表現で期待度が高すぎたのでしょう。どちらかというと平和でコミカル寄りな印象を受けました。
新人にまでからかわれいじりというよりはいじめのような扱いを受けてしまう小鳥遊の描写に不快感を抱きました(小鳥遊にというよりは彼に関わる周囲に対してですが)
鷹央に関しては「人付き合いが苦手」と表現されてはいますが、強引すぎ、己の好奇心のみに忠実という部分では、ドラマの「ドクター・ハウス」を連想しました。やっていることも病気の特定という意味では似ていますね。
とても超人的に描かれていますが、姉が怖いという弱点も添えられています。
が、人間離れしている部分ばかりが目立ち、宇宙人と会話しているように感じられるシーンが非常に多いです。
キャラクター小説として割り切れば楽しめますが、ミステリとして見た場合は期待外れという印象の作品でした。
残念なことに続刊も数冊積んでいるのでそのうち片付けます。