ROSEの読書感想文

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贋物霊媒師2 彷徨う魂を求めて (PHP文芸文庫)

 前巻よりハートフルな印象のシリーズ二巻目です。
 
 霊媒師(人間)と助手(幽体)というユニークな探偵助手関係だったところに新たな助手(人間)が加わった今巻ですが前巻よりも真面目に仕事をしている気がしました。
 ほぼ詐欺師のような口先で言いくるめる除霊という斬新なキャラクターが好きですが、前巻ほど詐欺っぽい印象は受けずただの少し素直じゃないけどいいおっさんみたいなキャラクターになってきたのではないかなと感じました。
 
 帯などには「ホラーミステリ」と書かれているのですが、所謂ホラー要素があまり感じられず、最早「幽霊が居る」ことを前提とし、証言や証拠を幽霊から得ることが出来るタイプのミステリという印象です。ホラーを期待するとがっかりするでしょうがエンタメ系ミステリとしては楽しめました。
 
 正直前巻のラストで終了するかなと思っていたので続刊が出たことに驚いていますが、この作者さんはどんでん返しを売りにしているので毎回仕掛けてくるんだろうなと身構えるせいか、今巻では前巻ほどの驚きを感じられる仕掛けはありませんでした(既刊全て読了した作者さんでした)
 
 章ごとに主人公が変わるというか視点が変わる作品で、語り手が生きている人間だったり死んでいる人間だったりするのですが、死んでいる人間の中でも自分が死んでいることを自覚出来ている人物と出来ていない人物がいるなど差別化されています。
 一番好きだったエピソードは居酒屋夫婦の章です。
 真相がわりとえげつないのですが、互いを思いやった結果すれ違っている当たりがなんとも切なく温かいエピソードだったなと思います。
 
 中盤でそうきたかという展開はありましたが、今までの傾向を考えるとそこまでインパクトあるものでもなく、決着もわりと平和的だったので少し拍子抜けしました。
 
 今巻のラストからすると続刊が出そうな雰囲気なのですが、今後ハートフル路線でいくのかミステリ路線で行くのかホラー路線に戻すのかが気になるポイントです。
 
 正直こちらよりは角川ホラー文庫の方のシリーズが待ち遠しい作家さんです。