ROSEの読書感想文

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聖者の落角 (角川ホラー文庫)

 
 シリーズ三作目で今回もキリスト教的な表現が多い作品でした。
 キリスト教知識があるとより楽しめるのではないかと思われるシリーズです。
 そして前作の主人公(?)、絶世の美男・敏彦がレギュラーメンバー入りという解釈でよいのでしょうか?
 
 難病の子供立ちが突然完治する「奇跡」が起こるが、完治した子供が異様な言動をする。
 そんな相談を受けた主人公、佐々木るみが怪異に挑んでいくのが今回の話なのですが、助手の牧師が序盤で脱落し、前作の主人公(?)、倫理観から外れた好奇心だけでつき動く敏彦が捜査に参加し、美貌を活かした色悪的な活躍を見せてくれるのですが、美女より質が悪いですね。
 
 この敏彦は前作からわりと推してる倫理観崩れまくったおかしい人なのでレギュラー参加してくれるなら嬉しいキャラクターです。前作のラストから彼の生活がどう変化したのかも気になっているポイントですし。
 
 参考文献に『沈黙』が加えられている部分が少し気になっているのですが、キリシタン狩りなどの時代で信仰とはなにかを問うような作品で、わりとトラウマ作品のひとつでした。ただ、テーマの軸の部分に類似点があるなと重い、今作もまた「信仰とはなにか」を問いかけるような面があるのではないかと思います。
 
 ホラーと言うよりは哲学に近い部分ですね。
 肉体的に「治った」状態で精神が「変わった」場合は果たして治ったといえるのか。
 倫理の試験にでも出てきそうなテーマです。
 ホラー的な怖さで言うと前作の方が怖かったかな(というか精神的な気持ち悪さが際立っていた)と思います。
 帯やあらすじで語られている「民俗学カルトホラー」というには民俗学よりカルトが勝りすぎているような気がしますし、民俗学的なアプローチよりはキリスト教的な思想の方が色濃いのかなと感じているシリーズです。
 一作目は読み切りだと思っていたのですが、今作の終わり方的にほぼ間違いなく続刊があると思うので、次巻も期待して待ちます。