ROSEの読書感想文

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血の配達屋さん (角川ホラー文庫)

 
 ホラー映画なら真っ先にロストしそうな性格の主人公が好きになれない一冊でした。
 
 導入がクトゥルフのシナリオっぽく、家出した母親を探しに北海道のド田舎に行くというところから始まるのですが、なんか主人公の性格がずれているというか全く好感を抱けないタイプです。
 
 幼少期から動物の死骸処理をさせられることが多かったらしくグロ耐性の高い主人公なので、こいつが探索者ならシナリオがサクサク進む上にシリアルになりそうな雰囲気です。
 やるなと言うことをどんどんやらかして自分から問題に頭を突っ込み事態を悪化させ続けるとなると一種の才能ですね。
 かなり身勝手な主人公で親切を受けても礼を言えなかったり表面上は礼を口にしても心の中で不満を口にしていたり、わりと道民を敵に回すような発言をしていたり……。
 とりあえず好きになれない主人公です。
 特にあら汁を「たいして美味くもない汁」と表現している部分は売り物のあまりで作っているから身が入っていないことを説明された上でそう表現しているあたり生意気なクソガキだなと感じました。
 
 今作は非常に猫が死ぬ作品ですね。猫好きの人は辛いのではないかと感じるほど、雑な扱いを受け、不憫な死骸になっていく猫たち。
 作者さんは猫になにか恨みでもあるのでしょうか。
 
 村クローズド系で、生きた内臓、動く猫の死骸などがわりと序盤から登場してきて化け物じゃんじゃん登場するじゃんなのですが、言い回しが独特だったりするせいでホラーと言うよりはコメディ寄りの印象を受け、怖いよりは「気持ち悪い」が勝る描写が多いです。
 
 解説によると家族がテーマの作品のようですが、主人公が全く成長せずに拗らせマザコンのような印象で成長ストーリーすら感じられないのと、序盤で母親が狂信者かな? と感じてしまったのでほぼクトゥルフ、カルト・ナウかな? という印象でした。
 
 館シリーズ綾辻行人さんが帯コメントなので期待していたのですが最近の角川ホラー文庫に期待するホラー感がなくなっているので残念に思いました。
 
 とりあえず今まで読んだ作品全てを思い返しても嫌いな主人公ランキング上位に含まれる主人公だったことは間違いない作品でした。