ROSEの読書感想文

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教室が、ひとりになるまで (角川文庫)

 TRPGで言うところの秘匿能力PvPシナリオみたいな一冊。
 
 特殊能力があることを前提としたミステリと見せかけてがっつり道徳倫理観に訴えかけてくるヘヴィなヒューマンドラマですね。
 
 思春期特有の空気を漂わせスクールカースト同調圧力などがテーマのひとつになっていそうです。
 
 主人公が通う高校で生徒の自殺が相次いでいました。そんな中、主人公は差出人不明の手紙を受け取り「嘘を見抜く」特殊能力を得ます。
 そして、学校内に自分以外に三人特殊能力を持った生徒がいることを知り、連続自殺は本当に自殺なのかという調査をするようになる。のですが……。
 
 能力の発動条件がわりとシビアなのがゲームっぽいですね。
 主人公の場合は「痛みを感じた直後」「同じ相手は三回まで」などの条件があります。
 毎回安全ピンで太股を刺しながら能力を使う場面を想像すると少しシュールですね。
 
 主人公は情報収集すると共に、自分以外の能力者を探すのですが、わりと向こうから来てくれる感。そして犯人はあっさり見つかる。のに! どうやったのかがわからない……。というスタイルの謎解きになります。
 自分の命も危ないけれど、なんとか相手の能力を暴いて使用できない状態にしたい。
 そんなサスペンス的なスリルもあるのですが、メインはスクールカーストの話でしょうね。
 だからといっておおっぴらにいじめがあるような環境でもなく、どちらかというと「学校全体が仲良し」というのを強調して、頻繁にイベントを開き生徒同士の交流を促すような学校です。
 この「善意」が本当に「善」なのかという哲学的な話だったり、特殊な力を手にし、それを利用して人を殺してもいいのかというこれまた哲学的なテーマがあったり。
 ただの異能ミステリだと思ったらがっつり倫理のお時間が始まってしまいましたというような作品でした。
 
 正直タイトルや特殊帯を見たときはデスゲーム系ホラー作品だと思ったのですが、全然方向性が違って驚きました。
 
 学校という空間の特殊性、そして学校を出た後にも引きずってしまうであろう学校生活について考えさせられる作品なのではないかと思います。