ROSEの読書感想文

読んだ本とかWeb小説の感想を書くよー

怪異の掃除人・曽根崎慎司の事件ファイル 生ける炎は誰が身を喰らうか (宝島社文庫)

 
 緩みを作りすぎて最早コメディという印象の一冊。
 
 初手でクトゥルフっぽいなと感じたのですが、ほぼクトゥルフのキャンペーンシナリオで、リプレイ小説かな? なんて思いながら読んでいました。
 全体的にクトゥルフ神話TRPGのルールブックをぺらぺらしていたら遭遇しそうなもので構成されているように感じます。
 
 助手役のアルバイトくんはなんというか見ていて可哀想になる(特にフラれ方とか)子ですが、お金ですぐ動く強かさを持ち合わせており、探索者としては非常に扱いやすいタイプの人物ですね。
 水をかけても給料上げても起きないとか守銭奴をネタにされるシーンが多めです。
 
全体的に会話がコメディ寄りで、設定やストーリー軸はシリアス路線なのにキャラが暴走しすぎててシリアスブレイクしています。ここまでコメディ寄りならオカルトホラーとか言ってないでオカルトコメディとかクトゥルフコメディとして売り出した方がよいのではないかとさえ思います。
 ギャグとして見ると会話のテンポもよくキャラの個性も強いのでたくさん笑える部分があります。が、それが強すぎてホラー要素がすべて吹き飛んでしまうのが問題です。
 
 四章構成でどんどん新しいキャラが登場するのですが、キャラクター全員が強い。キャラクター小説なのですが、キャラクターが強すぎて会話がどんどんコントのように展開されていく上に地の文部分も登場人物視点だから突っ込みやオチに使われていきます。
 主要人物にトランスジェンダーの同性愛者が登場したり全性愛者が登場したりとジェンダーセクシュアリティ要素も満載なのですが、その設定詰め込みすぎではありませんか? そこがなくてもこの人達十分過ぎるほど濃いですよ。
 一番好きだったシーンは曽根崎さんの発狂シーンです。卓中にあんな発狂RP見せてくれたら大喜びですよって感じの発狂を見せてくれました。
 
 雰囲気がリプレイ小説を台本式ではなく小説にしたという印象でしかなく、正直ホラー、オカルト、サスペンス、ミステリという公式が掲げるような要素が全て吹っ飛んだコメディの要素の方が強いです。
 たぶん一番ホラー要素だなと思ったのは熱い味噌汁を麦茶のように飲み干す曽根崎さんです。
 あとは意識不明になったときに給料に釣られて目覚める主人公ですかね。
 
 守銭奴が強い。
 
 コメディとしてはお腹を抱えて笑うレベルだったので、シリーズ化するのであればもっとコメディを前面に出してくれた方がマッチする人が増えるのではないかなと思った一冊でした。