恐怖と不安の心理学 (ニュートン新書)
専門書を期待していたらノンフィクション系? という印象を受けるほど、作者さんの体験をかき集めた一冊です。
息子と海でのエピソードから、出会った患者さんの話まで、主に作者さんの経験と主観で纏められています。
期待していたのはもっと生物学や医学的な、科学主体の解説書だったので、期待外れと言えば来たい外れだったのですが、一つ非常に興味深いと感じたエピソードがありました。
恐怖を感じない女性の話です。
脳の一部のエラーとでもいうのでしょうか。
彼女は恐怖を感じません。ホラー映画も怖くないし、犯罪に巻き込まれる危険性が高い場所もなにも考えずに足を踏み入れてしまうどころか犯罪被害に遭った翌日も同じ道を通ることが出来るほどです。
脅されるだとか怒鳴られるだとかそう言った類いの恐怖を全く感じない彼女ですが、そんな彼女でも恐怖を感じる場面があるのです。
生存本能に関わる恐怖です。
なにが起きても恐怖を感じなかった彼女も酸欠が近づくと恐怖を感じたという実験は人道的にどうなのかという疑問を抱きはしましたが、本人も同意の上行われたと言うことなので問題なかったのでしょう。
全体的に作者さんの主観で綴られており、科学的根拠などと言うよりは実体験と参考図書(時に映画)を引用しこういうことだと説明しようとしているようなのですが、タイトルで想像した心理学専門書というよりは雑誌のコラムを纏めた物というような印象でした。
ニュートン新書自体が初だったので、もしかするとそういう傾向なのかもしれませんね。
もう一つ面白いなと思ったのは、押し入れやクローゼットを怖がる子供が世界共通という点でしょうか。
押し入れが怖いだとかクローゼットが怖いと考えるのは文化背景ではなく本能的なものなのだなと考えられる面白いエピソードですね。
脱力して読むコラム集としては楽しめるかも知れませんが、恐怖を科学的に解説する本を期待していた身としてはやや期待外れの一冊でした。