ROSEの読書感想文

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屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

 館シリーズのようなミステリを期待したらパニックホラー風味だった一冊です。
 
 わりと序盤で明かされるのでもう書いてしまいますが、現実世界の本格ミステリだと期待して読み始めたらゾンビパニックものだった最初のドッキリから密室殺人が起きるというミステリ路線に戻されるなんとも言えない作品です。
 
 正直なところ期待してたのは館シリーズのようなミステリだったので期待外れだったのですが、ゾンビホラーとしてみてもうーん……というジャンルが微妙に悩む作品です。が、主人公を初めとしてキャラクターが魅力的で、キャラクター小説として見ると楽しめた作品になります。
 
 わりと明智さんが探偵役だと思って期待していたので序盤でいきなりロストして「あんた探偵じゃなかったんかい!」と思わず叫びそうになりました。
 いい人だった。明智さん。
 主人公はミステリマニアなだけあって様々な有名ミステリの話や有名なトリックがぽんぽんぽんぽん飛び出る。ミステリ解説書だったかな? というよりこの主人公がミステリをプレゼンしてくれるような本があったら読んでみたいくらい熱弁してくれるシーンは好きです。
 更にゾンビ博士がゾンビ映画やゾンビのパターンについて熱く語るシーン。いいなお前。めっちゃゾンビ映画詳しいじゃんか。というような、あれ? このパターンどっかで見たことあるぞ。「憧れの作家は人間じゃありませんでした」の主人公がめっちゃ映画について語るシーンを思い出しました。溢れ出る映画愛。
 こうやって好きな物について語り続けるシーンっていいですよね。
 現実でも好きなアニメや芸能人について延々と語ってくれる知り合いがいますが、全く興味のないジャンルでもそうやって好きな物をプレゼンしてくれるのを聞くのが好きなので、こういったシーンがある作品は好きです。たぶん作者さんもミステリやゾンビ映画が好きなんだろうなと思いながら読んでいました。
 
 今作はキャラクターの背景が特に重要になっていく作品だと思います。主人公の過去や被害者の過去、そして犯人の過去など普段は表面に表れない面について考えることが多い作品のように思えました。
 そして明智さんいい人だった。