ROSEの読書感想文

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自殺判定士 曽根崎都弦の自殺衝動 (富士見L文庫)

 自殺素人なんて表現初めて見たわ。という作品です。
 
 この作品は非常にジャンルが悩ましいところでして、当ブログのカテゴリ分けではキャラ文芸としました。
 ミステリと呼ぶには少しオカルト的な印象で、なにより曽根崎のインパクトがとても強いのでキャラクター小説に分類されるかな? と感じました。
 タイトルに釣られて購入したのですが、タイトルからイメージした物とはだいぶ違う作品に感じられました。タイトルの印象だともう少しホラー寄りの作品かなと期待したところでした。

 主人公の友人、曽根崎は自殺(未遂)が趣味のメンタルに問題がありすぎる人物で、毎度主人公が悲鳴を上げつつ蘇生する羽目になるのですが、そんな趣味のせいなのか、他人が自殺かそれ以外の死因なのかを判定できる妙なスキルを持っています。
 
 彼らは事件調査の為に自殺サークルに潜入するなどの活動もするのですが、そこで「自殺素人」なんて表現が出てきて大変驚きました。
 素人ってなに? 成功しない限り玄人にはなれないというか、命は一度きりなのだからループ999回目の自殺者でもないかぎり自殺玄人は名乗れないのでは? と思ってしまうのですが、一度も死んでいないはずの曽根崎を自殺玄人呼ばわりしていいのだろうか? という疑問を抱かせるためのポイントなのでしょうか?
 とんでもないパワーワードです。
 他の作品でもお目にかかる機会はない表現かと思います。
 
 それにしても「自殺」という繊細なテーマを当事者や関係者、それを利用しようとする悪人など様々な視点で描かれているのは興味深いです。
 特に主人公の自殺観というか生に対する捉え方は興味深いと思いました。
 曽根崎の自殺癖は捕らえようによってはギャグにもなるのですが、主人公の立場からするととても冗談では済まされないでしょうし、本人はいたって真面目に自死と向き合っているというのがどこか滑稽にすら感じられます。
 
 哲学的と言うよりはエンターテイメント重視の作品ではあるのですが、メインテーマに「自殺」が掲げられているため、人生や生死について見つめ直すきっかけにもなりそうな作品かと思いました。