ROSEの読書感想文

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公開処刑人 森のくまさん (宝島社文庫)

 
 ミステリとしては登場人物が揃った時点で犯人が予測出来てしまう気がしますが、ヒューマンドラマとしては描写が細かいなと思わせる作品でした。
 
 タイトルに「公開処刑人」とついているように「処刑」シーンがあるため、グロ耐性が低い人にはおすすめできない作品になります。
 
 前半で「森のくまさん」の正体がわかってしまったのですが、いくつもの事件が絡み視点が変わっていくスタイルの作品でした。
 世の中で「悪人」とされる人達を「処刑」していく連続殺人犯「森のくまさん」と、化粧品会社のトラブルが主な軸でしょうか。
 他に銃撃され意識不明になっている警察官の事件などもありますが、主軸はタイトル通り「森のくまさん」です。
 正直、小説を読むときに登場人物の名前をあまり記憶しない方の人間なので、犯人の正体に気づくまで時間がかかったと思いますが、きちんと記憶できるタイプの人はすぐにぴんときそうです。
 そのくらいミステリとして見るとシンプルすぎるのですが、犯人が犯罪者になる過程をヒューマンドラマとして見ると興味深い作品です。
 もう一つ特徴的なのが、インターネット上の掲示板描写が何度も出てくる点です。
 これは「森のくまさん」がターゲットを「処刑」した報告をしたり、閲覧者が「森のくまさん」に「処刑」を依頼するときに登場するのですが、作者さんはよく掲示板を観察しているのだろうなというほどどこかで見たことがあるようなやりとりが繰り広げられています。
 作中で「森のくまさん」に処刑される人達は全員漏れなくクズではあるのですが、肝心の「森のくまさん」の方も中々のクズっぷりなのでそういうクズが登場する作品が好きな人は間違いなく楽しめる作品だと思います。
 
 最後に添えられている童謡の対訳は馴染みある「森のくまさん」とは違うのでとても新鮮なものに感じました。
 
 もっと早く犯人に気づけたじゃん悔しい(じたばた~!)を久々に経験したという点ではかなり楽しんだ作品でした。(それでも前半で気づいたからまあいいか)