ROSEの読書感想文

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卒業生には向かない真実 (創元推理文庫)

 三部作の最終巻です。

 

 前作のラストのトラウマで情緒不安定な主人公は訴えられることになり、調停に持っていこうとする弁護士の言うことも聞かず、自分の軸を曲げようとしません。

 それと同時に鳩の死体や落書きなどのストーカー(?)被害も受け、更に追い詰められていきます。

 違法入手した薬物に依存したり、自分が自分ではなくなっていく状況に怯えつつ、その状況から脱出するには事件に挑むしかないと調査を開始するのですが……という前半と後半でがらりとトーンが変わる一冊でした。

 もう最初のミステリ作風はどこに行ったのか。完全にサスペンスでした。

 主人公の違法行為の数々がヤバい。

 訴えられたり、犯罪捜査配信している時点でよく大学が内定取消しなかったなと思うのですが、その後の違法行為が本当に違法行為のレベルを超えている。

 

 あまり書くとネタバレになってしまうので書けませんが、主人公は目的の為に手段を選ばない人間ですね。

 確かに法は味方してくれないときもあります。だからといって私刑を推奨されるべきでもないのです。が、後半は完全なる私刑ですね。

 上手くいきすぎなのは主人公補正というところでしょうが、ハッピーエンド風にまとめているけれどこれ結局誰ひとり幸せになっていないのでは? という印象です。

 もともとパートナーとして軽犯罪を繰り返していたけれどそこまで共犯になる? と衝撃を受け、主人公の自己正当化に呆れよりも恐怖を感じます。

 

 ミステリだと思ったらサスペンスホラーだった。というような作品でしょうか。

 少なくとも三部作第一弾の雰囲気を求めてこの作品を読んではいけないですね。

 好みが相当分かれると思います。

 面白い面白くない以前に、「おいおい嘘だろ!?」と言いたくなってしまいました。
 捜査手段自体は二作目と同等なのですが、主人公の異常性が強調されすぎたように思えます。

 単純にトラウマからくる変化とは言い切れず、初期の主人公を応援していたとすれば裏切られた気分になりそうです。

 最初から最後まで翻訳は素晴らしかったなと思います。この翻訳者さんの別の作品を読んでみたいですね。