ROSEの読書感想文

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自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫)

 

 タイトルインパクトの強い海外ミステリです。

 所謂探偵役は高校生の女の子。それも優等生。なんでも知ってるちょっと変わった子が、自由研究の題材に自分の住む街で過去に起きた殺人事件を調べ直す青春ミステリといったところでしょうか。
 三部作の第一弾で、凄腕探偵がズバッと直感的に推理、というわけではなく、いろんな人にインタビューしながら地道に証拠集めをして真相へ向かっていくタイプの作品です。

 本当に主人公の自由研究レポート作業を覗いているような気分になる作業記録やインタビューのやりとりなどが詳細に書かれており、主人公のかなりズレた感性や一種の図太さと年齢相応の繊細さが丁寧に描かれています。

 

 主人公が殺人犯の弟とされる人物の家に訊ねていく際も、個性的な言い回しを使ったりと、ジョークの翻訳も丁寧だなと感じました。

 翻訳小説自体は読むのが得意ではないのですが、括弧書きの注釈も丁寧で、文章も読みやすかったなと思います。

 GoogleFacebookなど実在のサービス名が出てきたり、架空の町と現実が組み合わされてリアリティのある世界なのでより、事件の衝撃を感じる作品でしょう。

 問題は主人公を素直に応援できるかという部分なのですが、やや独善的で他人のプライバシーにずかずかと踏み込んでいたり、情報のためなら不法侵入も平気でしてしまうような若さ故の暴走だけで済ませて良いかと悩ましい行動力のある女性なのでかなり好みが分かれそうです。

 

 全体的な描写は丁寧なので、三部作の中のこの一冊のみ読んでも楽しめる作品だと思います(続刊は本当に好みが分かれると思うのでこの巻で主人公が好きになれない人にはお薦めできません)

 タイトルインパクトが素晴らしく、よくこの原題からこのタイトルに訳したなと翻訳者さんに拍手したい作品でした。