伯爵令嬢ですがゾンビになったので婚約破棄されました (ウィングス文庫)
タイトルインパクトがすごい。
タイトルからはコメディ寄りかなと予測したのですが、自分を殺した犯人捜しをするなどシリアス風味です。
主人公は殺されて生き返ったことにより婚約破棄され、家族からも見放され、少ない使用人と客人暮らすことになりますが、自分を殺した犯人に関する記憶がありません。そこで殺人犯(戸籍上死亡にはなっていないため厳密には殺人ではない)を探して罵り、ついでに数発殴ってやろうと意気込むところから話が進むのですが、会う人全てが怪しく見えるという迷探偵っぷりを披露してくれます(記憶がないからしゃーないのもあるのかも)
よくあるテンプレを元にタイトルから推理すると元婚約者が怪しいのですが、元婚約者は甦ったことにより差別を受けている主人公を庇ってくれるなど犯人にしては奇妙な行動が目立ちます。
前提としてファンタジー世界なので魔術の類いがあることを頭に入れた上でミステリっぽい作品として楽しむことができるのではないかと思うのですが、ミステリとして見るとふざけんな展開ともとれるかもしれないです。
魔術のある世界なんで……。
タイトルだけ見ると凄くコメディタッチなのですが、ストーリーの半分以上はシリアス路線です。救いは主人公がわりと前向きに行動してくれることと、ライバル令嬢のツンデレっぷりでしょうか(主人公には嫌味だと思われているけど)。
主人公の元婚約者は序盤はなんだこいつ……という印象なのですが、中盤当たりから好感度が上がっていくタイプのキャラクターかなと思います。それよりも主人公の家族が宗教的な背景があるにしろ酷いなと感じてしまいます。
剥製師を名乗る客人の笑っていいのか微妙な死人ジョークと主人公自ら死んでいることをネタにしていくスタイルはブラックなユーモアですが、悲壮感を軽減しているなと思いました。
タイトルでギャグ全振り作品を期待していたのですが、完全に裏切られました。
しかし、主人公が自分を殺した犯人捜しをするという題材は面白かったと思います。