ROSEの読書感想文

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作家の収支 (幻冬舎新書)

 芸術の数学の部分。と言った本です。
 
 超有名作家さんなのにこの本が初めて読むというとても微妙な心境です。
 
 超有名作家さんの自分の体験を元にし、具体的な数値を使用して作家という職業の収支について語る本です。
 作家と聞くと数字なんて文字数くらい理解しておけばいいんじゃないの? みたいな雰囲気もありますが、商売として作家をしていく上ではこの「数字」をりかいしなくてはいけないという内容ですね。
 役者でいうところの、芝居をするためには電力をどれだけ使用して会場使用料がどれだけかかって音楽や戯曲の使用料がどれだけかかるからチケットをいくらで販売してどれだけお客さんに来て貰わなくてはいけないかという計算ができなくてはいけない。といったような話でしょうか。
 
 面白いなと思ったのが、作家に取っての顧客=読者ではないといぶぶんですね。作家という職業は原稿料を支払ってくれる出版社が顧客になるので、出版社に対してはある程度責任(売れるかどうか)を感じるけれど読者に対しては(面白いかどうか)そこまで責任を感じないという考え方です。
 なるほどなとわりと納得してしまいました。
 読者の立場からすると少しでも面白いものが読みたいですし、話題性だけでごり押しされたつまらない作品を掴まされると怒りたくも鳴ってしまうのですが、出版社と作家のビジネスと考えたときは話題性ある(流行の)作品を乱発してしまいたくなる気持ちも理解は出来てしまうのですね。
 作家として生活が出来るようになるにはとにかく数を出すこと。つまり一ヶ月に何冊出せるか、のような話も出てきます。
 書いた=収入ではなく本になった=収入と考えるとかなりシビアな世界です。
 印税率の話なども本の形態によって変わるという話や、翻訳された場合、漫画化された場合などの話も登場しますが、気になったのは電子書籍でしょうか。
 出版社を通さなければ印税率100%(極論)みたいな話ですね。勿論これは販売サイトやシステムも100%自前で用意できたら100%ですが、同人誌形式で販売サイトを活用する場合などは手数料がかかりますから販売価格=収入とはいかないのですが、それでも出版社を通して電子書籍を販売した場合と比較すると作家の取り分が多くなりますね。
 こう考えると将来的に電子書籍は出版社を通さずに販売する作家が増えるのかなと感じました。特に既に紙の本で名の知れている作家はその方が収入が増えますからね。
 
 作家を目指していなくてもビジネス的な考え方が興味深い一冊でした。