ROSEの読書感想文

読んだ本とかWeb小説の感想を書くよー

魔王城殺人事件 (講談社文庫)

 小学生探偵達が挑むミステリです。
 
 小学生探偵というとどうしてもコナンくんが浮かんでしまい、少年探偵団はもう完全にあのイメージになってしまうのですが、今作の主人公達は小学五年生なのでコナンくんたちよりも年上の高学年少年探偵クラブというところになりますね。
 
 町外れに建つ洋館(金持ちの別荘)をRPGの魔王城に似ていると子供達は「デオドロス城」と呼んでいます。学校では立ち入り禁止といわれているその魔王城にガサ入れ(と言う名の不法侵入)すると、ゾンビ女が現れ、その正体を突き止めるために再び魔王城に訪れると今度は死体を発見してしまうという話なのですが、揃いも揃ってクソガキですね。不法侵入して事件に遭遇したけど大人にバレると怒られるから証拠を集めてから報告しようとするという子供らしい動機です。
 主要な大人が探偵団のひとりの親戚である警察と、聞き込み相手のおばあさんくらいしか出てこないというのが少し新鮮でした(あと死体関係の部分が大人か)
 先生も登場するけれど完全なるモブ程度の役割で、子供主体のお話です。
 主人公の視点で語られており、小学生の視点で進んでいくというのがミステリとして要注意といったところでしょうか。
 謎解きとしてはおいおいという感じなのですが、作中で出されるアリの問題は謎解きとして面白かったです。
 ちゃんと解けるようにヒントをしつこいくらい出してくれていましたね。正直メイン事件よりもこちらのアリ問題の方が面白かったかなと思います。
 
 この作家さんの作品は初めてだったのですが、テキストは読みやすくてサクサク読めました。
 後書きも面白く、本編でも垣間見えた作者さんのユニークな部分が現れていたのかなと感じました。ああいうエピソードを書けるのは強いですね。
 
 事件は真相編でイマイチと感じてしまいましたが、クソガキ感が表現されており、だいぶ前の作品のようですが、今でも十分楽しめる内容かなと思いました。
 今度は主人公が大人の別な作品を読んでみたい作者さんです。
 

書きたい人のためのミステリ入門 (新潮新書)

 ミステリはミステリでもミステリ創作論というか読書論のような一冊です。
 書かなくても推理小説が好きな人は読むと楽しいのではないかと思いました。
 
 この本の最後に本の中で紹介された作品リストがあるので、これから読んでみる本を探す参考にもなりそうです
 
 一番衝撃だったのはリストの中で読んだことのある作品が5作品程度だったことです。結構読んだつもりが思ったよりもミステリをよんでいなかったと気づかされました。
 
 ミステリの編集の方が書いた本というだけあり、テキストが非常に読みやすく理解しやすい書き方でした。
 もう凄いトリックが思いついている、凄い事件が思いついているという人はヒントの出し方や構成について書く手がかりがたくさんあると思います。逆になにも事件が浮かばない、トリックが浮かばないという人に対しても、身近な題材にいくらでもヒントが転がっているよという創作に対するヒントになるような作品を具体例を出してくれています。
 全体的に、語り方から優しさを感じる一冊で、他者さんの別ジャンルの創作論を読んだときに言葉の選び方がやや攻撃的だなと感じた本があっただけに、作者さんの真摯さというか、フェアさを感じられた一冊でした。
 
 ミステリというジャンルに対する作者さんの愛のようなものも感じられ、ポーから始まりわりと最近の作品まで網羅されているのが流石(職業的なものもあるかもしれませんが)だなと思いました。。
 それにしても原稿用紙3000枚の応募原稿は凄いですね。何事にも限度がありますし、長ければいいってものでもないですよね。
 ここ十数年(下手したら二十年くらい?)Web投稿へのハードルが下がったので作家一本で食べていこうと思わなければ、小説は誰でもチャレンジ出来て気軽に他者に公開出来るものになりました。この本をヒントにミステリに挑戦してみるのもありなのでは? と思わされるだけの後押しをしてくれるような書くためのポイントまで添えてくれる親切さは、きっとこの本を読んだ誰かが新たなミステリ作品を生み出してくれることに期待もしているのだろうと感じさせられました。
 
 ミステリに限らず、小説に限らず創作者に大切なのは食わず嫌いせずにいろんな作品に触れてインプットし、ひたすらアウトプットを繰り返すことですね。全く同じ事を大学時代の恩師(劇作家)に言われたこともあり、非常に重要な部分なのだろうなと思いました。
 

暗黒騎士の俺ですが最強の聖騎士をめざします2 (GA文庫)

 
 シリーズ二冊目です。
 コミカライズの原作ですが、コミカライズ版は序盤しか読んでいません。
 
 今回は「オレさま」系幼女が新キャラとして登場し、前巻よりもラブコメ色が強くなったように感じます。
 熱血バトル系少年漫画を期待していたらラブコメだった感が強いです。
 
 主人公は相変わらずストイックに努力家ではあるものの、周囲の女性達からすっかり逆ハー状態になってしまっています。
 お姫様誘拐からのバトル漫画展開は熱いのですが、そこに辿り着くまでの間のラブコメパートがあまりに長く感じられ、途中で読むのを諦めようかと思った程です。
 
 前巻ではあまり気にならなかったのですが、章と章の間にアニメのナレーションのように次回こんな展開がみたいな煽りっぽいテキストが挟まれる率が高く、Web連載ではアリなのでしょうが、文庫で読むと気になるというか醒めてしまう印象で、書籍化するときに削除して表現を変えても良かったのではないかなと感じました。
 週刊連載の漫画そのものという印象で、作者さんもそういうのを意識しているのかな? と感じました。
 
 バトルシーンは本当に王道少年漫画のような、苦境を乗り越えていく展開なので、バトル漫画好きはこういう展開が熱くなるでしょう。
 特に味方のピンチが連続し、主人公も危ないというところからの展開は週刊少年ジャンプのような激熱展開です。
 
 既にナンバリングされている作品なのであまり強くは言えない部分ですが、続刊が出ており、エピローグがありつつも次巻へ続くエンドになっています。
 今作で新たな大きな謎を残し、敵は倒せたけど謎解きは次巻へ続けるというか、もう新しい敵用意しておいたよというようなエンディングです。
 
 続きを更に購入して読むかと言うと、今作はこの辺りでリタイアさせて貰おうかなというのが正直な感想でした。
 

腹を割ったら血が出るだけさ(双葉社)

 
 タイトルインパクトが凄すぎて発売直後に購入したのにやっと読み終わった一冊です。
 以前別作品を読んだ際に会話のテンポとタイトルセンスの良い作者さんだなと思ったのですが、今作も会話のテンポが非常によかったと思います。
 
 が、今作は複数の登場人物の視点が頻繁に入れ替わり読むのがやや疲れました。
 主人公(たぶん)の女子高生をはじめ、視点が切り替わる登場人物達はそれぞれ少し形は違えども他人の視線を気にしすぎる、他人からの評価を気にしすぎる人達で、そう言った部分も読んでいて疲れてしまう描写でした。
 
 書店でアルバイトをする主人公(たぶん)な女子高生は他人から「愛されたい」欲求が強すぎる子で、常に相手のリアクションを気にして「気に入られる」「愛される」行動ばかりを選択するという非常に人生が大変そうな人物である上に、『少女のマーチ』という小説(作中作)を人生の軸にして、小説の中に登場する人物とそっくり(と思い込んでいる)な他人にいきなり声をかけ付き纏っていくような行動力のある子です。
 
 小説の中の登場人物にそっくりと言われる「あい」はフェミニンな装いの男性で、他人と本音で付き合いたがる人ですが、これも「裏表を嫌う」というか、他人からの反応を気にする軸ですね。
 
 更に映画になった『少女のマーチ』の主題歌を担当するアイドルグループの一人もファンや周囲の人間からどう見られるのか、徹底的に管理した自分以外を見せたくない、全てはシナリオ通りに動いて欲しい人間でこれまた生きるのが辛そう。
 
 そしてダメおしとでもいうのか、主人公(たぶん)な女子高生の幼馴染みはクラスでややいじめられている(といってもあからさまな過激描写ではない)が、心の中で他人を見下し、他人の粗探しをすることを趣味としているような危ない子で主人公のことも動画撮影したりと「崩れる」瞬間を探すために監視しています。
 こういう行為も、他人に見下されていることから相手の弱味を握って優位に立ちたいとでもいうような他人からの反応を気にしての行動ですね。
 
 主要登場人物全員面倒くさい。
 アイドルがいるからややネット上での事件にも発展しますが、基本的には女子高生の周囲という限られた範囲での物語です。
 
 人付き合いというのは誰でも悩むことがあるテーマだとは思いますが、ラストでタイトルが本当に秀逸だなと思わされました。
 
 タイトルインパクトが全てというような作品ではありましたが、案外恵まれていそうな人も心の中ではとても悩んでいるのだとそういう単純なことを面倒くさい人達で深く表現されていたのかなと思います。
 

エルフでビキニでマシンガン! (MF文庫J)

 ラノベ特有のわけがわからないタイトル。
 手に取らずにはいられなかった一冊です。
 
 もう、タイトルでは全く中身が想像出来ません。なんとなくドンパチやりそうな雰囲気を感じ取ったくらいです。
 
 読んでみた感想は……Z級映画感。
 一部の人にはカルト的に響きそうな印象です。
 
 まず前提としてミリタリー系に興味がないと厳しい情報が多数。
 そして学校に銃火器持ち込んでいる学生がいるんですけど? 持ち物検査とかそれ以前の問題ですよね? 主人公なぜ受け入れている???
 
 これらの謎も「コメディだから」でごり押しできてしまうのがこのジャンルの強みですね。
 
 武器商人と密売交渉を学校でする場面も斬新ですが、異世界の物資を買い集めて故郷へ運ぶスタイルの異世界人が登場するのは面白いなと思いました。
 ミルクやオムツ、生理用品などメイドインジャパンの品物を持ち帰ろうとする異世界人。普通に外国人留学生みたいですよね。
 
 主人公は異世界転移(異世界人が故郷に帰ろうとした転移魔法)に巻き込まれる形で異世界「テ=キサス」へ行ってしまうのですが、ビキニの加護とかわけのわからない世界観で突っ切っていますね。
 
 一章読んで意味がわからない。と思ったのですが、半分読んでもさっぱりわからない。なんなら全部読んでもわけがわからないのに、作者さんの情熱だけは伝わってくる……という感じでZ級映画のような奇妙な愛おしさがあります。
 
 しかし、ミリタリー系全くわからないのにマシンガンだの銃撃戦の描写が多く、ついでにビキニが多い。
 本当に銃とビキニ美女が好きなだけの作者さんなのではないだろうか? みたいな、監督の趣味だけで上映に漕ぎつけた低予算映画のような、ここでその描写必要でした? このキャラその行動する必要あります? なんでこうなった??? と頭の中は疑問符でたくさんになるので、やはり一部の愛好家にだけ響くような作品なのではないかと思いました。
 
 この感想を書いた人はエルフもビキニもマシンガンもときめかない人間なのですが、Z級映画が大好物です。
 たぶんこの作品を好きと言える一部の狂人枠に含まれるでしょう。
 

終わらない男 ~警視庁特殊能力係~ (集英社オレンジ文庫)

 ついに最終巻です。
 
 作者さんの20周年だったそうです。
 
 BLも書いている(というかそっちがメイン?)の作者さんということもあり、それっぽい雰囲気の描写も所々あるので苦手な人は苦手かもしれません。
 
 最終巻なだけあってオールスター作品というか、無理矢理引っ張り出されたのではないかというキャラもちらほら居るのですが、劇場版仮面ライダーのようなお祭り騒ぎという印象の作品でした。
 
 主人公の視点で語られる作品なので人間関係回りがやや疑問が残ったようにも感じますが、事件の方は解決出来たのでよいでしょう。
 
 作家の同居人の作品が書店平積みされる展開はなくてちょっと残念でした(そりゃあ前巻から時間経ってないからそうなんですけど)
 
 前巻のラストからの続きになりますが、メインは四十数年前の事件の真相を解き、舞台沖縄の有名人を探る展開です。
 最終刊でここぞとばかりに主人公の特殊能力「一度見た顔を忘れない」を発揮してくれたのは最早読者サービスというような印象です。
 整形した後の顔でも能力が発揮出来るというのは本当に犯罪捜査では活躍するチート的な才能ですよね(但し罪状までは能力で覚えられない)
 
 ほぼ全キャラが見せ場があり、本当にオールスター劇場版の印象しかないのですが、随分とんとんと事件が解決したなと思ってしまったり、黒幕っぽい人がただのいい人だったりと警察ものではあるものの、やっぱりキャラクター小説なのだなと感じました。
 全9巻(たぶん)(完結と書いてたし)で新米だった主人公が成長し先輩になる……というわけでもなく、あくまで上司に憧れ、頼れる上司の下で頑張る部下という構造のままだったので、主人公がいつか頼れる上司になる日は来るのかと親戚のような目で見たくなりました。
 
 相変わらず情報屋やフリーライターからの情報に頼っていたり退職した元同僚を普通に捜査に利用してしまったりとこんな警察大丈夫かと言いたくなってしまう部分は多くありましたが、最後まで楽しめた主人公の応援したくなってしまう好感度は素晴らしいと思いました。
 職場に一人欲しいタイプの熱血くんでしたね。
 
 
 実はこの作者さんの他の作品が積み本の中にあるようなのですが、テキストは読みやすい作風だと思うのでそちらも期待しつつ何処にあるのか探せずにいます。
 
 

憎まれない男 ~警視庁特殊能力係~ (集英社オレンジ文庫)

 購入後数ヶ月積みっぱなしだったシリーズ第八巻です。
 
 もうこんなにシリーズ続いてるのか。もうやることないだろうにってくらい、主人公の能力が活かされる場面が限られているように感じていましたが、熱血系な主人公にかなり好感が持てます。
 
 先に書いておくと、今までは一冊で一つの事件が解決するキリのいい終わり方をしていましたが、今回は次巻に続くエンドです。
 幸い、次巻も手元にあるのですぐ読める……。でもこのパターンだったら同時発売か上下表記にして欲しいなと思ってしまうのです。(積みっぱなしだったから問題ない)
 
 主人公が一度見た顔を忘れないという特殊能力(但し覚えられるのは顔だけ)の持ち主で、それを利用して未解決事件の手配犯を捜査する部署で活躍しているのですが、努力のみで捜査ファイルを丸暗記している上司が週刊誌で本人が特定出来てしまうレベルの写真とイニシャルを掲載されてしまうというところから今回の事件が始まっていくのですが、無能な警察上層部がいらんことをしているシーンがとても印象に残ってしまいます。
 警察にイメージアップ戦略は必要ないでしょう。地道に捜査して結果を出すのも大事ですが、犯罪を未然に防ぐことが一番の役割ではないでしょうかと市民の立場からは考えてしまうわけですが、こんなすごいことやってるんだよ! とマスコミ向けに発表したい上層部。
 無能な上司ほど困る物はいません。パワハラより質が悪いですよ。
 という個人の体験含む感想が浮かんでしまいました。
 
 今回は主人公が情報屋を頼ったりと、尊敬する上司の為に奮闘するお話になるわけですが、警察がそんなに情報屋頼りでいいのかよ。とか、正義感が強いのは主人公らしい性格ですが、不用意に参考人接触してしまったりと主人公の刑事として未熟な部分が度々強調されてしまっているように思えます。
 シリーズも終盤なのだからもうちょっと出来る刑事に成長しました感があってもいいのかなと思うのは初期から主人公を見て応援したくなる、言わば親戚みたいな心境で応援していたからでしょうか。
 初期の頃は度々叱られていた「声が大きい」特徴が少し落ち着いてきたのは寂しくも感じますね。
 主人公と同居している作家(の卵)が怖いくらい順調で、最終巻で単行本平積みされるような作家になっていても驚かないなと感じているところです。
 地味に彼の活躍に期待して最終刊に挑みたいと思います。