ROSEの読書感想文

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転生ババァは見過ごせない! ~元悪徳女帝の二周目ライフ~ (レジーナブックス)

 
 タイトルインパクトが強い。
 老女が少女に転生し無双する話。という印象のタイトルですが、実際はそこまで無双感もないように思えます。
 物語の殆どが小さな町一つで終わってしまいます。
 悪の女帝だった主人公が神の力で300年後の世界に転生し、前世の強さと度胸を使って賞金稼ぎをしつつ若手育成に励む……話、だと思ったのですが、うーん。
 
 主人公は悪人相手なら躊躇わずに命を奪える人間です。
 所謂少女小説系のヒロインとはその辺りからかけ離れているでしょう。
 そしてタイトルに「ババァ」と入る割に「ババァ」感があまりないのです。
 精々老女と友人になったり、年齢の割に随分と達観しているなぁと思われる程度で、もう少し老人感を強調した単語選びや話し方でもよかったのかな? と思ってしまう程度には老女感が薄い。
 まあ、女帝だったし、転生して若返ったし多少は変化があったものなのかな? と思えば納得はできるのかもしれません。
 
 今回推したいキャラクターは警備隊隊長のヒルズ青年です。
 責任感の強くて真面目なのにやる気が空回りしちゃう人物で、信念を持って仕事をしているのに気持ちばかりが先回りしてしまって本来の実力を出し切れないでいる感じが非常に好みでした。勿論、後半は主人公の影響もあり、立派な人物へと成長していくのですが……(勿体ない。あのままポンでいてくれてもよかったのに……)と、残念な子が好きな身としては少しばかり寂しく思います。
 
 前半で主人公が悪党狩りばかりしていたので、てっきり魔物などは居ない世界なのかなと思っていたら後半でがっつり魔獣(というか野生動物?)が出てきておお……っとなってしまいました。やはり獣と戦うのはロマン武器が映えますね。
 
 今作でやや気になった点は、主人公は異世界人(現地人)で現地人に転生(というよりは自分の肉体を若返らせて復活?)するようなスタイルだというのに、パロディっぽいネタをかなり頻繁に口にしている点でしょうか。これが異世界に転生した日本人が主人公ならあまり違和感がないのですが、現地人→現地人の転生と考えると読んでいてやや気になってしまうてんでした。
 あとはエピローグの描写は不要だったような気がします。(イメージ)がしつこく感じ、バッサリ削っても問題なかったシーンのような気がしました。
 番外編の受付嬢さんエピソードは彼女の苦労が垣間見え、ギルド受付嬢というのも大変な仕事なのだなと思ってしまいます。特に、上司運は重要なのだろうなと感じました。
 
 全体の感想としては、主人公はチート能力など要らないと言ってはいるものの、そもそもの女帝自体がチート級能力者のためあまり説得力がないと感じてしまったことと、ロマン武器を振り回す美少女(中身は老女)という面白い設定を考えるとやや惜しいなと思ってしまいました。