宮廷書庫長の御意見帳 (富士見L文庫)
カテゴリが少し迷いましたがキャラ文芸に入れました。
一応、お仕事小説、という分類になるのでしょうか?
立場が逆転したような上司と部下のやりとりが楽しい作品です。
書マニアな上司(主人公)と有能すぎる部下(めっちゃ強い)で、上司の方が部下に頭が上がらない関係というのが面白いですね。
宮廷書庫長で書を愛する主人公。ここでけ見るととても雅なイメージになるのにどこか残念なポンコツ感が漂い途端に愛おしく感じます。
しかしこの主人公、やれば出来る子。でもサボりたいというタイプ。
最初は時代物風の謎解き系なのかな? と思ったのですが、結構がっつりファンタジー要素盛られていました。
あらゆる意味で巻き込まれ型主人公。巻き込まれてもゆるゆるなんとなくで生き延びるタイプですね(実際なにが起きても生き延びるけど)。
有能すぎる辛辣部下は意外と情に厚い面もあり、なんだかんだで仕事を愛し、上司を尊敬しているとういのもギャップがいいですね。照れ隠しで当たりが強くなるのもツン全開感があって好きです。
ツンデレはデレると価値がなくなると思うタイプの人間なのですが、そう考えると
この部下くんはツン98%くらいの感じがして非常に好みです。
今作は巻き込まれ型主人公が書に釣られうっかり首を突っ込んだ事件からどんどん危険に巻き込まれていく構成です。
中盤くらいで年齢よりもかなり若く見える理由なども明かされるのですが、そこが巻き込まれた理由にも絡んできます。
つまり、彼は大人しく引きこもって仕事をしているのが安全なので、部下が仕事しろとせっつくのも合理的なのではないでしょうか?
迫力のある部下、威厳のない上司……。やればできるからまだいいものの、毎日上司がサボらないように見張らなくてはいけない部下の立場を考えると胃が痛くなりそうです(胃痛持ちは上司のほうだけど)。
部下と上司のやりとりだけ見ていれば中々コミカルな印象にはなるのですが、二人の抱えている背景はややシリアスです。更に、普通に考えれば命懸けになりそうな事件に巻き込まれていくのでシリアス:コメディが6:4くらいですかね。
後宮もののドロドロ感はややマイルドに感じられるのは主人公の立場が当事者ではないからでしょう。十分えげつないことが行われていますが、女同士の戦いをメインに描かれた作品と比べればややマイルドな印象です。
全体を通して考えると、漫才のような会話の動きを楽しめる作品だと感じました。