ROSEの読書感想文

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異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん―森でのんびりさせていただきます(アルファポリス)

 まさかの主人公が老女。

 まずそこに衝撃を受けます。

 こちらの作品はタイトルにあるように「異世界転生」ではなく「異世界召喚」タイプの作品で、主人公はたまたまそれに巻き込まれただけのごくごく普通(にしてはなんだか鈍感が過ぎる気もする)老女です。

 

 よくあるステータスシステム。チートおばあちゃん。

 だからといってムキムキ老女ではなく、ほのぼの系おばあちゃんが主人公なのです。

 更に興味深いのが、この作品は、主人公がスローライフを送るための土地へ辿り着くまでの冒険物語というところでしょうか。

 異世界から間違えて召喚してしまったからと国からお金をもらい、ついでにやらかしちゃったからと神様からもチートを授かった主人公は畑や庭、温泉のある素敵な土地でスローライフを送るために物件探しへ出かける……のですが、警戒心がなさ過ぎる。

 治安のいい日本に慣れすぎてしまったおばあちゃんは現地人達に過保護な扱いを受け、目的地まで護衛を雇って旅をすることになります。

 

 が、最早護衛と言うよりは介護。

 5人の若者達に護衛と言うよりはほぼ介護されながら、料理を振る舞ったりクッションカバーを作ったり、時々いらんことをして叱られたり……と旅を楽しむ物語なのですが、主人公が老女なので介護士たちは孫のような存在です。

 物産展で購入したお茶を振る舞ったり、好みに合わせた食事を作ったり。なんとなくほのぼのします。

 しかし、異世界で魔法なんてものが使えるとなると老女だって大興奮します。

 そして、老女の魔力はチート。教える介護士さんが病んでしまう程度にはチートなのです。

 

 今作は勇者を召喚した国の方が悪になり、それ以外の人々は優しくやや過保護な人物で満たされています。

 もう一つ興味深かったのは作中で登場人物の【つぶやき】が登場することでしょうか。

 主人公の視点だけでは語りきれなかった部分を補強する形でつぶやきが添えられています。

 このつぶやきがまた登場人物達が善意で動いているのだと示していてほっこりします。

 

 主人公の老女は大変適応力が高いというか、老人特有の拘りが薄いこともあり、老女感がやや薄く感じられてしまいますが、食事の時に血圧などを気にしたり、熱中症を思い出して慌てて対策したりと健康に気を使うあたりは高齢者……と感じられました。

 神様折角チート付与で「若返らせた」のに結局前期高齢者スタートというのも面白いですね。中身は後期高齢者なので一応若返ってはいるのですが……。

 

 高齢者に振り回される介護士(ではない)5人のやりとりが非常に楽しい作品でした。