ROSEの読書感想文

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スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫 (集英社文庫)

 お菓子作りは科学だ! 
 
 お菓子がテーマの謎解きものです。人が死なないミステリなので血生臭いのが苦手な人も安心ですね。
 
 今作一番の注目ポイントは主人公が吃音だということでしょうか。
 漫画だと「ワンダンス」の主人公が吃音持ちだったなというのが思い出せる範囲で唯一なのですが、小説で主人公が吃音持ちというのは初めて遭遇したと思います。
 吃音持ちで人と会話がうまく出来ない主人公は特に「カ行」の発音が苦手で、なるべく「カ行」の音を使わないように会話しようとしたり、同じ音を連発してしまうのを気にして事前に話す内容を練習したりと苦労が多いのですが、理数系が学年トップレベルに成績がよいなど真面目な優等生であることが窺えます。
 クラスのイケメン(お菓子マニア、お菓子のことになると性格が変わる)のチョコレートが盗まれた事件からお菓子作りをするようになり、それがきっかけで推理していくようになる探偵が主人公のパターンのミステリです。
 が、この小説、お菓子の知識&科学の知識が非常に重要です。吃音に関する知識は主人公がネットで調べて自分の症状を改善しようとする工夫として紹介はされるのですが、それでも吃音に関する知識もあった方がよいかもしれません。
 お菓子の絡む謎解きの過程は本当に科学実験のような解説になり、その部分がわからなくても犯人当ては出来るのでしょうが、やはり科学知識がないと納得とは言い難いでしょう。
 そして、同じお菓子を様々な名称で呼ぶという知識に関してもあらかじめ理解している方が推理には有利でしょう。
 レシピを極めるイケメン同級生も凄いですが、そんな人物を生み出した作者さんのお菓子へ対する情熱というか、お菓子に対する愛がまた凄いなと感じました。
 
 食品アレルギーが多い人間なので、食べ物に対してそこまで関心がないのですが、製作過程の化学反応知識は非常に面白く楽しめました。
 また、吃音の主人公が活躍する作品なので、同じような苦しみを抱えている人を理解するきっかけになるかもしれない作品だなと思いました。